セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.556『無人スタンド』

GS業界・セルフシステム

2015-04-27

 今年の 2月,経済産業省はGSの過疎化対策として,地域の石油販売業者などがタンクローリーを定期的に巡回させ,広い駐車場などを利用して,住民の車に直接給油することができるよう装置の開発を進めるとして,今年度1億5千万円を予算計上すると発表した。ただし,現行の消防法では,ローリーからの直接給油は原則として禁止されている。経産省主導で規制緩和が進められることに危機感を感じたのであろうか,消防庁(総務省)は,「隣接する商店などに危険物取扱者の資格を持った人がいれば,無人でも営業を認める方向」(2月10日付「日本経済新聞」)で協議会を発足させ,今年度中に成案を得たいとしている。

 世界一厳しいとさえ言われる,日本のGSに対する消防行政が“無人”という文言を用いたことにいささか驚いたのだが,その後,この件について新しい情報は発信されていない。それにしても,「隣接する商店」が運営する無人GS(もちろんセルフ方式)とは,どんなイメージのものなのだろう。同じ敷地内にコンビニとGSがあるEM「エクスプレス」のような規模のものなのだろうか。それなら,販売量が見込めない中山間地での運営は厳しい。とはいえ,田舎の八百屋や小間物屋のじいちゃんばああちゃんに危険物取扱者の資格を持たせたところで安全性が保たれるとも思えない。

 そもそも,省力化を意図して導入されたセルフ方式だが,これまでセルフスタンドが作られてきたのは都市部とその周辺がほとんどで,過疎化を防ぐどころか,加速させてきたのが実態だ。また,既存GSをセルフ化させるのに,今ですら小さなGSでも1千万程度の設備工事が必要だというのに,これを無人化させるとなれば,さらにどれほどの監視・防災機器の設置を義務付けられるやら…。規制緩和の名の下に,新たな規制強化を行なうというのは,役所の常套手段ともいえる。

 そして,もっとも重要な問題は,無人化によって,くわえタバコによる給油や,ポリ容器への給油などの監視がなされないうえ,放火などのいたずらもされやすくなり,火災の危険性が高まるということ。そうなった時,だれが消火活動を行なうのか,明確なガイドラインを定めなくてはならない。結局,GSの過疎化を防ぐために,GSを無人化するという理屈には,“なんでそうなるの?”と首を傾げたくなる。

 郵政改革の時には,“地方の郵便局を守れ!”と声高に叫ぶ人たちがいたが,GSが自由化と少子化の中でどんどん減ってゆくことにはあまり関心が向けられることもなく,今日に至ってようやく対策に迫られるようになったという訳だが,こうなった責任は,石油元売にもあるわけで,やはり,100㌫出資の販社などに,市況破壊活動ともいえる安売り量販なんかさせていないで,過疎地でのGS運営をさせることで,社会貢献すべきではないか。あるいは,無人化による火災のリスクをなくすためのこれ以上ない妙手として,各町村の消防署の敷地内または隣接地に無人給油所を設置すればよい。無論24時間営業。安心でしょ?

 しかし,実際のところ,田舎のGSでは,セルフ設備がなくても,顔見知りの客に向かって,「いま,おとうちゃん配達に行ってなさるんで,自分で入れて行ってくんなさい」なんて,ばあちゃんに言われて,「あいよ」と客のじいちゃんが馴れた手つきで軽トラックに給油してゆく,という光景を目にすることがままある。性善説に基づいた,ユルいけれども,究極のローコストセルフである。これを私は『なんちゃってセルフ』と呼んで畏怖している。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ