セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.626『現場で起きていること』

社会・国際

2016-09-20

 連日報じられている,豊洲新市場問題。現在の築地市場が手狭になってきたうえに,施設の老朽化も進んでいるため,江東区豊洲に新たな市場を建設することになったのだが,元々は東京ガスの施設跡地であったため,ベンゼンやヒ素など6種類の有害物質が,国の環境基準を大きく上回る数値で検出された。そのため,土壌汚染対策として深さ4.5㍍の盛り土を施し,その土台のうえに施設を作ることが有識者会議によって提言され,それに沿って建設が進められているはずだった。

 ところが“開けてビックリ玉手箱”,盛り土などなく,中はスカスカの空洞になっているうえ,染み出した地下水と思われる不気味な水溜りが。東京都の採取検査によれば,環境基準を超えるような有害物質はなかったとのことだが,もはや「食の安全」の土台も空洞化してしまったと言わざるを得ない。すでに,豊洲移転を進めていた食品卸業者に中には,「豊洲に移転するならおたくからは買わない」と取引相手から通告された業者もいると報じられている。

 なぜ,当初計画どおりに工事が行なわれなかったのか。だれが,どのような理由で計画を変更したのか─。いま,マスコミが血眼になって“犯人探し”をしている最中だが,私が抱くもうひとつに疑問は,「なぜ,いまになるまでだれも気がつかなかったのか」ということである。政治家であれ,有識者であれ,基礎工事が行なわれている最中に現場を視察していれば,膨大な量の土が全然搬入されていないことぐらいすぐに気がついたと思うのだが…。結局,現場に赴いて自分の目で工事の進捗状況を確かめることをだれもしなかったことが,この問題を深刻化させたのではないだろうか。

 GS経営も,現場を頻繁に,つぶさに観察することが大切だ。特にそこで働く人間を観察すること。慣習にとらわれていたり,指示が理解されていなかったりして,経営者の意図が実践されていなかったということは珍しくない。むしろ,現場とは,目を離すとすぐにそういう状態になるものなのだと考えておいたほうがよい。現場の人間からすれば「俺たちのことがそんなに信用できないのか!」ということになるかもしれないが,社長や幹部が頻繁に様子を見に来るということは,それだけ信頼に応えていることを実際に見てもらえる機会がたくさんあるということだ。

 “一生懸命やっていれば,必ず誰かが見てくれている”とは言え,やはり社長に直接見てもらうに越したことはない。それに,現場の問題点や要望などを,社長に直接伝えることもできる。そして何よりも,双方のコミュニケーションが強まる。経営者が現場に足繁く通うことは,やはり大切なことなのだ。今回の豊洲の問題も,歴代の知事たちが一様に“だまされた”と言っているそうだが,もっと現場を注視していれば,だまされるようなこともなかったのではないか。

 石油元売においても,支店長会議で,社長から「採算販売は待ったなしの課題。貫徹せよ」との檄が飛んだとのニュースがしょっちゅう報じられているが,実際に現場を見て回れば,社長からの指示が全然実行されていないことがすぐにわかるだろう。とりわけ,元売販社が今月に入ってまた価格攻勢を強めており,市況は崩れつつある。かつて,東京の政府の意向を軽侮して,勝手に戦火を拡大させていった関東軍のようだ。我々PBスタンドも否応なくその戦渦に巻き込まれる。

 それにしても,元売は本当に現場をコントロールできないのだろうか。いや,むしろ,できない振りをして,実際はシェア拡大という本当の目的を達成するために,販社を完全にコントロールしているのではないか。そうだとすれば,豊洲市場と同様,市況安定という“盛り土”をすると言っておきながら,せっせと採算の取れない“空洞化”したシェアを拡大させていることになる。

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