セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.101『ハイテク犯罪との闘い』

GS業界・セルフシステム

2006-03-27

 セルフスタンドの普及は、計量機の開発に大きな変化をもたらした。何といっても、これまで従業員が操作していたものを、お客様自身の手に委ね、使ってもらうことになったのだから、様々な改良を施さねばならなくなった。軽量化されたノズルや、抗菌加工されたグリップなどが開発された。紙幣読取機やカードリーダーなどが内蔵され、その場で精算を済ませることもできるようになった。音声案内や液晶モニターによるキャンペーンや油外商品のコマーシャルも提供できるようになるなど、計量機は単なる給油装置から、“給油ロボット”とも言えるまでに進歩を遂げている。

 中には、お客様に楽しんでもらおうと、スロット機能を搭載したものもある。給油終了時に画面がスロット画面に変わり、絵柄が揃うと値引きが入るというシステムだ。なかなか面白いことを考え付くものだと感心する一方で、ここまでくると、セルフスタンドを狙った “ゴト師”のような輩が現われるのではないかという不安が頭をもたげてくる。笑い話では決してない。

 事実、インターネットで公開されているブログの中には、「ガソリンをタダで入れる方法」などと題した文章があったりする。そこには、某メーカーの計量機を非連動状態にして給油するテクニックや、某社製POSが内蔵されている計量機の料金計算を止める方法などが書かれている。実際に試してみたわけではないので、それらの方法が本当に通用するかどうかは未確認だが、こうした裏ワザ情報が、たちまち日本中に広がるのがネット社会の怖さである。

 ネット犯罪といえば、昨今世間を騒がせている「ウィニー」による情報流出事件でも分かるように、顧客情報が盗み出され、人手に渡り、悪用される危険性は日ごとに度を増している。元売は、ふた言目には“クレジット会員を獲得せよ”と言うが、帳票も含めたそれら顧客情報が、当のスタンドできちんと管理されているかといえば、疑問符が付く。と言うのも、前述の裏ワザ情報にせよ、顧客名簿の流出にせよ、それらはスタンド業界に勤務していた、もしくは、いまも勤務している人間が介在していると思われるからだ。実際、「2ちゃんねる」などには、スタンドでアルバイトをしているという人物が、「うちの社長(店長)は滅多に店に来ないうえに、システムの事なんか分かってないからやりたい放題」というような書き込みをしていたりする。残念な事だが、これが現実なのだ。

 セルフ化に伴い、スタンドの省力化・ハイテク化が加速した事で、スタンド経営者はこれまで経験したことのない犯罪と闘わざるを得なくなってしまった。システムエンジニア(SE)の世界には「技術を理解できない管理者は管理者失格である」という格言がある。管理者は部下と同じように作業ができるほど技術を知っている必要はないものの、技術全般に渡る理解力や洞察力を持っていなければならないというわけだ。これからのガソリンスタンド管理者も、ただの接客馬鹿、洗車馬鹿では務まらない。計量機やPOSの仕組み、顧客情報の管理などについての知識を持ち合わせていなければ、今後ますます増えるであろう社内外の新手の犯罪に対処することはできないだろう。

 SEの世界には、「仕様変更は、後になるほど高くつく」という格言もある。悪知恵を駆使する犯罪者とのいたちごっこは、結局のところ、計量機やPOSの仕様変更や仕様追加というコストを発生させる事になる。ハイテク機器を導入したものの、それが仇となって余分な出費を余儀なくされるということのないよう、システムの選定は、経営者自身が十分吟味して行なうべきである。

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