セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.102『石油離れ』

GS業界・セルフシステム

2006-04-03

 先日、知人が今シーズン最後のスキーを楽しもうと長野県へ出かけた。宿泊先のロッジは、今シーズン当初までは灯油ボイラーによる暖房だったのだが、経営者は昨年末の灯油価格の高騰に危機感を抱き、電気による床暖房に切り替えたと言う。そのロッジは2~3日でドラム缶1本(200㍑)を消費する宿泊棟が10棟あるとのことで、シーズン中は毎週5㌔㍑を超える灯油を焚いていた。それが1滴も灯油を買わなくなったものだから、それまで灯油を配達していた近所のガソリンスタンドは大弱り。何とか数棟だけでも灯油暖房を残して欲しいと泣きついてきた時には後の祭りだった。

 また、最近町内のガス器具店のショーウィンドをのぞいたら、急上昇の折れ線グラフと、低い平行線のグラフとが対比された図に、「灯油はこんなに値上がりしていますが、ガスは低価格で安定しています」というような事が書かれたポスターが貼られていた。暖房の主役争いは電気とガスに奪われ、灯油はすっかり“悪者”扱いされてしまった感がある。

 私の店でも、最近、これまであまり見なかった光景をしばしば目にすることがある。そろそろ灯油シーズンも終わりなのだが、花冷えの日などには、ポリ容器ではなく、灯油ストーブのカートリッジ・タンクを持ってきて、直接そこに給油をしてゆく人がいるのだ。その量はせいぜい3~5㍑だ。消費者は、締めるところはしっかり締める。お高い灯油の在庫を持つようなムダはしないのだ。

 こうした世間の動きを見聞きしていると、来シーズン以降、灯油消費量は確実に漸減してゆくのではないだろうか。元売各社は、今年の灯油価格のつり上げ成功で、大いにもうかったと聞いているが、本当にそうなら、まさに「天に唾する行為」と言わざるを得ない。冒頭紹介したロッジ経営者のように、“脱石油”宣言をする消費者を増やしてゆくことにならないか。

 そんな状況の中で、消費者の憤りを少しでも鎮めようと、ガソリンスタンド経営者の多くは、セルフ化をはじめとする血のにじむようなコスト軽減を図りながら、ガソリンや灯油の値上げ抑制に取り組んでいる。中には、「安売りスタンド」の名に恥じぬようにと、1㍑15円もの赤字を出しながら灯油を売った強者もいたらしい。恐れ入ります。

 元売や組合の方々は、ギリギリの価格で販売しているスタンド業者を愚か者呼ばわりしているが、むしろ、そうした業者は、消費者の石油離れを少しでも食い止めようと自己犠牲的な“努力”を払っていると評価されても良いのではないだろうか。少なくとも、1㍑15円も、20円もマージンがなければやってゆけないような「高売りスタンド」は、業界の“お荷物”でしかない。

 もちろん、我々はボランティア活動をしているわけではないのだから、薄いマージンでも生きてゆけるよう、ローコスト体質に一層磨きをかけてゆかなければならない。それでも、やむを得ず値上げをしなければならない時は、いっその事、『当店では以下のようなコスト削減に取り組んでいます』との掲題のもとに、人件費から光熱費、消耗品費に至るまでを記した一覧表を、店頭で公開してみてはどうだろうか。それを見た客から、「あら、うちの家計簿とそう変わらないわね」なんて同情されるかもしれない。それでもまだ、「値上げはけしからん。ガソリンが高すぎる」と怒る客のためには、『苦情はこちらまで。どしどしお電話を』として、元売本社の電話番号を掲示しておいてはどうだろうか─。

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