セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.103『格差社会』

社会・国際

2006-04-10

 もうすっかり耳馴染んだ“格差社会”という言葉。「機会の平等は格差を生み、結果の平等は競争を奪う」というわけで、その是非を巡って喧々諤々の論争が繰り広げられているきょうこの頃である。規制撤廃が進む中で、市場に活力が生まれる一方、あらゆる分野で優勝劣敗の構図が進み、「負け組」となった貧困層の拡大が進んでいる。それがひいては、社会の治安やモラルをますます荒んだものにしてしまうとの不安も広がっている。

 ガソリンスタンド業界も、この格差社会の影響を受けている。何と言っても、今月で9年目に突入したセルフ時代の到来が、この業界に劇的な変化をもたらした。それまで、特約店・代理店の力を少なからず必要としていた元売は、セルフ化によって事実上の直営化が実現可能となり、よりドラスチックな手法でシェア拡大を推し進めるようになった。

 「元売は我々に対する仕切り価格よりも安い価格で子会社に売らせている!」と憤りの声を挙げる小売店主たちは、自分たちが、すでに元売が描く“格差社会”において「負け組」の部類に振り分けられていることを認めなければならない。もちろん、その状況に甘んじていて良いわけがない。系列離脱を図るにせよ、系列内に踏みとどまるにせよ、ローコスト経営に活路を見出し、何とか生き残ってゆかねばならない。

 格差社会が進む中で最も懸念されるのは、若者たちの中に蔓延する閉塞感である。IT長者となって稼ぐ若者がいる一方で、ニートやフリーターが階層化しており、所得格差のみならず、希望格差も広がっている。ガソリンスタンド業界はそうした若者たちの受け皿の一つとなっているのだが、ひと昔前は、パートタイマーであっても、職場に対してある程度の勤労意欲や帰属意識を持ち合わせていたのだが、最近では、希望や目標のない若者たちが増え、“戦力”とならない者が多いとの嘆きの声をよく聞く。

 もちろん、ガソリンスタンドで働く若者たちの中には、技術を磨き、良い資質を発揮している人たちも大勢いる。しかし、そうした人材を定着させるだけの経済力がこの業界にはない。例えば、ある元売が毎年主宰している優秀従業員コンテストの上位入賞者の大半が、翌年には業界から姿を消しているという寂しい話もある。理由は様々なのだろうが、やはり、『この仕事で将来人並みの所帯を持てるだろうか』との不安が大きな要素となっているのではないか。

 好決算に沸く元売会社の社員のみなさんがどれくらいのボーナスを受け取るのか知らないが、相変わらず不毛の安売り合戦に明け暮れているスタンド業界のボーナスとの“格差”は、ますます広がることになるだろう。当然、希望の格差も広がってゆく。縁あってこの業界に入ってきた若者たちが、現実的な希望を持てるような収益構造を築くよう早急に手を打たないと、将来、ガソリンスタンド業界で働く人々は(経営者も含めて)、元売会社の単なる奴隷に成り下がってしまうことになり(もうとっくになっているという説もある)、そんな業界には、まともな若者は集まってこなくなるだろう。

 業界団体の人々が、フルサービスとセルフサービスの販売量の格差とか、大手特約店と中小販売店の仕入れ値の格差といった、コップの中の格差をギャーギャー論じているうちに、いつの間にかガソリンスタンド業界全体が日本経済の格差社会における「負け組」のレッテルを貼られてしまいそうな気がする。新年度早々、気の滅入ることを書いてスミマセン。

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