セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.106『赤字洗車』

GS業界・セルフシステム

2006-05-12

 連休中に、近所の大型セルフスタンドへ洗車に行った。先月頻繁に降った黄砂混じりの雨のおかげで洗車場は大繁盛。2台のドライブスルー洗車機の前には順番を待つ車の列ができており、スタッフ1名が誘導係をしていた。私の順番が来て、料金を入れようとしたところへ別のスタッフが近づいてきて、「お客様、洗車カードはお持ちですか?」と尋ねてきた。

 「うわ~やっぱり来たか~。そうだよな~この時期に洗車カードを売らなきゃ、一体いつ売ろうかってなもんだよな~」などと思いながら、「いえ、持っていませんが、結構です」と答えると、「洗車カードなら半額で洗車できますよ」と食い下がるスタッフ。「いえ、きょうはお金がないので…」と“必殺トーク”で振り切ると、300円のシャンプー洗車を。黄砂でドロドロに汚れたボディをきれいさっぱり洗い流した。

 それにしても、シャンプー洗車が300円、ワックス洗車が500円とは、ちょっと安過ぎるんじゃないだろうか。電気代、水道代、洗剤代に加えて、洗車機はフル稼働でブラシなどの損耗度は上がるうえ、汚泥槽も流れ出た黄砂が通常の何倍もの勢いで溜まっているに違いない。おまけに、洗車場専属のスタッフを2名も常駐させて人件費もかかる。それでもってなぜ1回たったの300円なのか。しかも、洗車カードを買うと半額の150円。書き入れ時のこの時期に、何が悲しくて赤字の種をまいているのか、頭の悪い私にはさっぱり理解できないのだ。

 セルフスタンド同士の競争は年々激化しており、いまや油外収益をあげられなければセルフであっても存続は難しいとされている。それどころか、セルフスタンドの方が油外収益をあげやすいとの説もあり、現在建設されているセルフスタンドの多くは、油外収益を当て込んだ大規模・重装備の店舗が主流である。もちろん、見込み通りの数の客が来店し、これまた見込み通りの油外収益があがれば言うことはないのだが、現実はそう甘くはない。

 何としても計画売上げを達成するためにこの業界が取る常套手段は、安売りすることである。利益は後から付いてくると言わんばかりに、採算度外視の安売りをして現金をかき集めようとするのである。先ほどのセルフスタンドでは、300円洗車が半額になる3,000円の洗車カードを、さらに半額の1,500円で販売していたこともある。ということは、シャンプー洗車1回あたり75円!?

 そもそも、洗車売上げと洗車粗利とは異なる。洗車1回にかかる様々なコストを厳密に積み上げ、それらを売上げから差し引いたものが粗利である。当たり前の話だが、案外、この当たり前のことが無視され、“洗車売上げが幾ら”ということだけで競っている場合が多い。仮に洗車カードを半額セールで売りまくったとしても、それは翌月に赤字洗車のツケをまわしているだけだ。多くのセルフスタンドには、洗車カードという名の“赤字国債”がたまっているのではないだろうか。

 また、別のスタンドでは、『ワックス洗車をしていただいたお客様はガソリン5円引き』という看板を目にした。1㍑20円も利益があるならいざ知らず、1回1,000円程度の洗車と引き換えに、なけなしのガソリン粗利のほとんどを吐き出してしまうとは、一体どういう損得勘定をしているのだろうか。ガソリンが先か、洗車が先か─この際、そんなことはどうでも良い。はっきりしている事は、どちらもガソリンスタンドでしか提供できない、数少ない貴重な商品であるにもかかわらず、馬鹿げた安売り競争で、全然もうからないものになってしまっているということだ。こんなことをいつまで続ける気なのだろうか。

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