セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.107『人手が足りない!』

GS業界・セルフシステム

2006-05-15

 私の店がある日進市は、愛知県の“セルフ銀座”と呼ばれる地域だが、先日ここを管轄する消防署から、署長名で次のような“御達し”が来た。

 『先日、日進市内のセルフスタンドにおいて、深夜時間帯に危険物取扱者が不在のまま営業している事業所を確認しました。

 『ご承知の事と存じますが、セルフスタンドは、無資格者である顧客が給油等の行為を安全に行なうため、消防法第13条の規定により危険物保安監督者の監督、指導並びに甲種または乙種第四類の危険物取扱者免状所持者の立会い(監視下)において認められた給油取扱所であり、この規定に対応できない場合は当該給油取扱所の運営ができないこととなります。

 『各事業者におかれましては、顧客が安全に給油等の行為が実施できるように、甲種または乙種第四類危険物取扱者免状所持者の常駐を徹底されるよう通知します。なお、改めて立入検査を予定しているので申し添えます』─。

 どこのセルフスタンドかは知らないが、消防署が自発的に深夜に立入検査をしたとは思えないので、恐らく同業他社の“タレコミ”により指摘を受けたのだろう。元売は、二言目には「コンプライアンス!」とやかましいが、実際のセルフスタンドの現場では、人手不足で「危険物取扱者の常駐」などとても叶わない。セルフ・フルいずれにおいても、24時間営業のガソリンスタンドの多くが、深夜時間帯は有資格者不在のまま営業しているのが実情のようだ。

 同じような事態に陥っている業界にドラッグストアがある。医薬品は薬剤師がいる店でなければ販売できないが、厚生労働省の調査によると、薬局における薬剤師の不在率は20㌫にも上るという。3年ほど前に、ディスカウントストアのドンキホーテが、複数の店舗をインターネットで結び、薬剤師がいなくなる夜間などにテレビ電話を通じて薬剤師が応対するサービスを始めたのだが、関係機関から違法性を指摘され、結局中止したことがあった。

 ドンキホーテでついでに思い出したのは、一昨年、さいたま市のドンキ店舗が放火された際、通路や階段にうず高く積まれた商品の“圧縮陳列”がたたって被害が増大したとして、消防署による一斉検査を受けた事件。多店舗展開・長時間営業・大量陳列という売上優先の三拍子が、法令軽視につながったと言えよう。

 日本経済は好調で、特に東海地方は好景気が続いているそうだ。(私自身はその恩恵に少しも浴していないのだが…)その結果、新卒者の求人は“売り手市場”の状態で、学生アルバイトまで、大手企業が根こそぎさらっていってしまう有様だ。ガソリンスタンド業界がきちんと教育・訓練を施した人員を“常駐”させるのは、至難の業なのである。中には、時間と金をかけてやっと一人前にした人材を、客としてやってくる取引先の求人担当者に引き抜かれてしまったという惨めな話もある。

 セルフといえども、その多くは、カーケアやコンビニなどを併設しており、常時幾人ものスタッフを配置させなければならない。本来、人手をかけずに営業できるのがセルフの強みのはずなのに、大型化・複合化によってかえって人手がかかるセルフが主流になっているのは、まったくナンセンスだ。ガソリンの安売りで疲弊し、満足に人手も確保できないにもかかわらず、店はいつもピカピカの状態にせよ、油外収益は計画を達成せよ、法令は24時間遵守せよと命令されて、店長さん、できますか?人手不足が深刻化する中で、いま一度、セルフスタンドの在りようを真剣に考えるべきである。

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