セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.112『人間関係』

GS業界・セルフシステム

2006-06-19

 読売新聞社が実施した全国世論調査で、社会の人付き合いや人間関係が希薄になっていると思う人は、2000年7月の前回調査よりも7ポイント増え、80%に達した。希薄になっていると思う人は、大都市よりも、中小都市や町村で急激に増えており、人とのつながりの喪失感が大都市部だけでなく、全国的に広がっていることが浮き彫りとなった。その理由では、「人と接するのをわずらわしいと思う人が増えた」が49%で最も多く、次いで、「人の立場を理解できない人が増えた」が48%、「テレビゲームやパソコンなどでひとりの時間を過ごす人が増えた」が45%―などの順だった。

 セルフスタンドは、こうした社会の傾向にマッチした販売システムといえる。これまで何度も書いてきた事だが、セルフスタンドが日本のどの地域でも消費者の支持を集めているのは、ただ価格が安いからだけではない。「人と接するのがわずらわしい」と感じる人たちにとって、「あれはいかがですか、これはどうですか」と従業員にまとわり付かれることのないセルフスタンドは、居心地の良い場所なのである。

 私のスタンドでも、たまにフィールドに出てごみなど拾いながら、給油中のお客様に「コンチワ!」などと声をかけるのだが、チラッとこちらを見るだけで、何の返事も帰ってこないことが多い。最近では挨拶をかけることすら、うっとうしがられるご時世なのかと思い知らされる。

 しかし、所詮ガソリンスタンドとはそういうところなのだと割り切ってしまえばどうということはない。むしろ、これまで「オートオアシス」だの「アメニティプラザ」だのと称して大仰に構えてきたことを反省して改め、シンプルで、機能的なスタイルを基本とすべきだろう。大多数の客は、ガソリンスタンドで“心の通うお付き合い”などしたいとは考えておらず、“心も満タンに”したいなどと願ってもいないのだ。そうと分かれば気が楽になるというものだ。

 希薄化する社会にあって、ガソリンスタンドはますます“燃料補給所”としての役割に徹せざるを得ないのではないか。実際のところ、ストレスの募る現代社会では、うざったい接客のないセルフスタンドで、ひとりぼんやりと給油する方が、客にとっては“ほっとステーション”なのかもしれない。

 「人と接するのがわずらわしい」と感じているのは、客だけではない。元売も、次第に特約店・販売店との関係を希薄化させているように思う。セルフ化によって直営化を進める元売にとって、“物言う”特約店とのコミュニケーションはわずらわしくなる一方のようだ。中小零細店には「無理して買ってもらわなくてもいいですよ」と言わんばかりの仕切り価格を提示し、一方では、直営セルフ店による価格破壊を進める現在の元売は、利己主義が蔓延しているいまの社会の風潮をそのまま反映しているように思える。

 冒頭の世論調査では、人間関係の希薄化で社会にどんな悪影響が出るのかについても、「自己中心的な人が増える」62%、「社会のモラルが低下する」55%、「地域のつながりが薄れる」55%─との調査結果が出ている。世の中の空気がどんどん冷たく、ヒリヒリとしたものになる中で、ガソリンスタンド経営者は、客との距離間の取り方、元売との親密度の置き方に悩まされている。

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