和田 信治
GS業界・セルフシステム
2006-06-26
先日、ある独立系スタンドの経営者からセルフ改造の相談を受けた。一週間後に見積書を届けに行くと、社長室でこんな会話になった。
「ところで和田さん、これだけ業転ガソリンが高止まりしていると、うちもどこかの系列に入った方がいいんじゃないかと思うんだがどうかねぇ」
「それは社長の自由ですが、元売さんは皆それぞれ自社POSと、クレジットカードシステムをお持ちですから、それらとジョイントできない当社のセルフシステムは、系列入りしたあとでは、元売さんの反対に遭って導入は難しいかもしれませんよ」
「でも、元売のシステムはいろいろコストがかかるじゃないか。そもそもどんなシステムにしようが、金を出すのはこっちなんだから、元売にとやかく言わせるつもりはないよ」
「社長、もうそんな“正論”が通用する時代じゃないですよ。むかしの元売は、ただマークを揚げて、自社製品を売ってくれれば、それ以上口出しはしなかったかもしれませんが、いまでは自分たちの指定する道具と仕組みを使って売らなければダメ、という姿勢なんですよ。その代わり、元売の言うとおりのシステムに改造すれば、それから何年間か販売量に応じてインセンティブが出るそうですよ」
「ああ、そうらしいねぇ。ワシの知ってるスタンド経営者も、元売からセルフ化を勧められて、そのインセンティブの話を持ちかけられたと言うとったよ。けれど、それにも増して改造費がどえらい金額になるものだから断ったら、今度は元売が銀行を連れてきて、ここから金を借りてやりなさいと説得しに来たんだとよ」
「元売さんも、自社物件の改造は一巡したようだし、新規出店にはそれなりに金がかかるから、系列店が所有する目ぼしい物件をセルフ化することに一段と力を入れてるようですね」
「でも、そんなふうにしてセルフにしたら、完全に元売の言いなりになっちまうじゃないか」
「ですから社長、系列入りしてセルフ化するというのはそういうことなんですよ。でも、銀行まで連れて元売が説得しに来たというその特約店は、それだけ目をかけられているだけまだマシじゃないですかねぇ。私の知ってる、ある外資系スタンドは、元売にセルフ化の相談をしたら、『あなたの店は敷地が狭いから当社のセルフ規格に合いません』と一蹴されたそうですよ。おまけに、近所の同じマークの直営セルフ店の会員価格は、そのスタンドの仕入れ価格とほぼ同値だそうで…」
「結局、一匹狼(独立系)で生きるのも、群れ(系列入り)で生きるのも、大変って事か」
「そうですね。とにかくキーワードは“セルフ化”ということだと思いますよ。セルフ化を思い立った時、社長のように、独立系から系列入りを模索する方もおられれば、別の経営者は、セルフ化を機に系列から飛び出してしまいました。自分のスタンドをセルフ化してどうしたいのかということを明確にすれば、系列に入るか出るかもおのずと答えが出るように思うんですがね…」
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