セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.114『100パーセント子会社』

GS業界・セルフシステム

2006-07-03

 新日本石油は7月1日から、全国の全額出資(100㌫)子会社のうち、大都市圏の約300店でガソリン価格を一斉に3-5円程度引き上げた。このコラムを書いている時点では、他社に追随する動きは見られず、これが全国的な市況是正へとつながるかどうかはわからない。しかし、業界トップ企業が、「隗より始めよ」とばかりに100㌫子会社に号令をかけて市況是正に乗り出したことは、素直に評価してよいのではないか。少なくとも、市況悪化の責任を元売子会社にかぶせてきた小売店主たちに「やるときはやりまっせ!」というメッセージを送る事ができただけでも、効果的だったと言えるだろう。

 当然の事だが、100㌫子会社のスタンドは常に親である元売の指示を忠実に実行しなければならない。例えば、元売本社の連中が考え付いた様々な“素晴らしい”アイディアの実験場として、いろいろなことをさせられるのも100㌫子会社。何年か前の話だが、あるスタンドの店長は、毎朝早起きしてスタンドの裏にある雑木林に懐中電灯片手に出かけてゆき、カブトムシを“仕入れ”てきて、スタンドで油外商品として売らされていた。子供向けキャンペーンの実験の一環なのだという。店長は「こんなロクでもないこと考え付いた奴、オレが蹴飛ばしてやる」と激怒していた。

 また、人手不足だろうと何だろうと、来月から24時間営業を実施せよと命じられれば、店長たちがサービス残業をしてでもやらねばならない。クレジット会員を何百件獲得せよと求められれば、勤務後に親類・友人宅をまわって「使ってくれなくてもいいから」という“セールストーク”で入会を頼まねばならない。彼らは常に、各支店においてあらゆる面で“優等生”であらねばならないのだ。

 しかし、そのような涙ぐましい努力によって築いた成績も、他の特約店主たちからは「あそこは100㌫子会社だから、どうせ“親”からいろいろ援助を受けているんだろ」と勘繰られ、まともに評価してもらえない場合が少なくないという。

 「あれほど悔しいことはない。連中(特約店主)は元売が用意した服(企画や制度)に対して、丈を長くしろ、袖を短くしろと注文を付けられるが、我々は服に自分の体型を合わせるほかないのです。我々だって、時には元売に文句を言いたい事もありますが、言ったところでどうしようもない。やるしかないんです。そういう条件下で必死になって築いた実績を、やっかみ半分に“どうせお前らは…”と難癖つけるのは、うちの従業員への侮辱です」とはある100㌫子会社の経営者。確かに100㌫子会社のスタッフたちが販売戦争の最前線にあって流した汗と涙は、公平に評価されるべきだ。そもそも私の知る限り、100㌫子会社の悪口ばかり言っている経営者に限って、その10分の1も努力していなかったりする。

 しかし、一方で元売がこの従順な“近衛兵”たちを用いて、各地域で無益なシェア争いを繰り広げてきたことも事実である。特に、セルフの時代を迎えてからというもの、100㌫子会社運営のセルフスタンドは、凄まじい値引き攻勢を仕掛け、他社だけでなく、自社の系列特約店の経営までもメチャクチャにしてしまった。特約店が当該支店に抗議すれば「100㌫子会社は本社直轄なので我々にはどうにもできません」と、ひたすら逃げ口上。だから、これまで散々な目に遭ってきた人たちには、いきなり100㌫子会社が「あすから良い子になります」と宣言しても、にわかには信じられないのだ。結局、100㌫子会社の評判をおとしめているのは、元売という身勝手な親のせいではないだろうか。

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