セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.115『コンビニ併設か、スタンド併設か』

GS業界・セルフシステム

2006-07-10

 『併設店でスピードパス廃止・現金一本化…小売業の姿に』─今月5日付の油業報知新聞にこのような見出しで、興味深い記事が掲載されていた。それによると、千葉県で昨年オープンしたセブンイレブン併設セルフ(エッソ系)が6月末日をもって、「スピードパスのご利用で1㍑2円引き」の大看板を下ろしたという。近隣のSS関係者の解説によれば、セブンイレブンの値付けに一物二価は存在せず、客の囲い込みに有利だからといっても、コスト負担が残るだけということで早々と見切りをつけたのではないかとのこと。記事は、「セブンイレブン併設店の(二重価格)廃止はSS業界が現金一本価格という当たり前の小売業に近づくものとして歓迎したい」とのコメントで結ばれている。

 今月に入り、市況陥没地域での価格是正が進んでいるが、表向きは値上げしても、実際は「本日値引き中」の看板でだれでも2~3円引き、会員カードを使えばさらに1~2円引きというのが当たり前となっている。私の店の近所にあるセルフスタンドは、表示価格は134円だが、クレジット会員なら9円引きで給油できる!

 ガソリンが15円も20円ももうかった時代ならいざ知らず、10円未満、地域によっては5円以下にまで落ち込んでいるという昨今では、価格値引きは「貧すれば鈍する」のことわざ通りの愚かな行ないである。ところが近年は、元売が自社の顧客囲い込みのために、クレジット会員値引きを積極的に進めている有様で、前回述べたような100㌫子会社批判はこの辺にもあるのだ。

 お互いに相手を出し抜こうと、二重三重の価格ランクをもうけての値引き合戦がこれ以上エスカレートしたら共倒れになろうかという矢先の、先のセブンイレブンの“英断”は、ガソリンスタンド業界への警告といえる。コンビニ業界は、値引き競争という泥沼に決して入ろうとはしない。ひとたびそれを始めれば、即業界破滅への道を歩み出すことを彼らはよく知っているからだ。大体、「134」という看板価格を見て来店した客に、なぜ頼まれもしないのに、そしてただでさえ利幅が薄いのに、9円も値引きしてやらねばならないのか。コンビニ業界の人たちにはさっぱり理解できないだろう。私も理解できない。

 エッソとセブンの関係に限らず、どの元売もコンビニ業界にラブコールを送り、「僕の土地が~五百坪を超えたら~結婚しようよ~、ん~ん~♪」(吉田拓郎の「結婚しようよ」のメロディで歌ってください)なんて歌ってるが、晴れて所帯を持っても、ダンナのスタンドは、だらしない値引き販売しか能がなく、パートナーのコンビニにまで「お前も割引チケット乱発して、オレの売上に貢献しろ」と迫る体たらく。そんな結婚生活だから、いつまで経っても“利益”という名の子宝には恵まれない。その結果、早くも“家庭内別居”状態に陥っているコンビニ併設スタンドもあると聞く。

 そもそも、“コンビニ併設”という呼称自体が間違っている。ロクに稼ぎもできないくせに、いつまでも亭主関白風を吹かせるスタンド業界は、態度を改め、世帯主をコンビニに譲るべきだ。しかも、昨今のスタンドは皆セルフ。コンビニの店員が片手間でラクラク運営できるのだ。二重価格を蹴っ飛ばしたセブンイレブンのように、「スタンド併設コンビニ」がどんどん増えた方が業界は健全化に向かうのではないかと期待している。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ