セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.119『夏季セミナー』

GS業界・セルフシステム

2006-08-07

 夏の到来と共に、元売各社や各地域の石商などがこぞってセミナーを開催している。「経営高度化」とか「SS活性化」といったタイトルを冠しての各種セミナーはどれも盛況のようだ。その内容の一部は業界新聞で報じられるので、私も拝見させていただくのだが、相変わらず現実離れした理想論を語るセンセイ方が多いように思う。

 例えば、ある講師は、「店が儲からなければお客に失礼」だと訴えている。「客は、その店を潰すために来店しているのではなく、商売を続けてほしいと応援している。店が顧客を育て、適正価格で販売し、油外販売も役割分担を決めて全員参加で共に成長する事が商売繁盛の秘訣」なのだと言う。

 この原油高どまりのご時世に「適正価格で販売」し、人手不足が慢性化している中で「役割分担を決める」なんて唱えるなんぞは、ほとんど“寝言”だ。客が本当に「商売を続けてほしいと応援している」のであれば、値上げしたら客が減ったのはどうしてなのか教えてもらいたいものだ。また、センセイ方は二言目には、「CS(顧客満足)実現のためにES(従業員満足)向上を」とおっしゃるのだが、ガソリンスタンドに顧客が求めているのは、1円でも安くガソリンを販売する事であって、それを実現しようとすれば従業員に満足のゆく待遇を提供することはできないのだ。他の業種はともかく、ガソリンスタンドではCSとESは二律背反の関係にある。

 ほとんどのコンサルタントが、価格競争ではなく接客サービスが顧客満足につながると主張し、人材育成と教育訓練の必要性を訴えるのはなぜか。うがった見方かもしれないが、彼らは皆、元売や組合からギャラをもらって講義するのだから、価格競争をあおるようなことは言いたくても言えないのではないか。「結局ガソリンスタンドは価格が勝負」という真実から経営者やSSマネージャーの目をそらせるために、作り笑いの練習をさせたり、目標を連呼させたり、フローチャートを作らせたりしているとすれば、罪な話である。

 また、別のコンサルタントは「どのSSも個性がなく、PRが足りない。もっと顧客の心に響く告知が必要だ」とぶったかと思うと、そのあとから販促品販売会社の社長が現れて、「当社のPOPやチラシを活用すれば告知力アップはまちがいなし。今なら特別価格でご提供いたします」と“営業”するという段取り。商売が目的なら、はじめからそう言えば良い。セミナーなどと称して人を集めるのは、どこぞの新興宗教同様、偽善ではないか。まあ、そんなセミナーに金を払って参加者している人も人だが…。

 しかし、レギュラーガソリンが140円を超えるような昨今ともなると、客が買わないのは接客の良し悪しや目標管理の優劣などではなく、価格が高いからに過ぎないということは、だれの目にも明らかになってしまった。いまや「お客様に感動を与えるサービスを」などという妄言を聞いている場合ではない。仕入れコストや販管コストを抑制することの緊急性はますます高まっている。

 人材育成も結構だが、「やってみせ、言ってきかせて、させてみせ…」なんて、連合艦隊の司令官にでもなった気分で呑気に構えていると、セルフ化への対応が手遅れになるかもしれない。また、セルフ化したものの、高度化とか差別化といった言葉に酔わされ、ゴチャゴチャとコストのかかる事をやっているなら、一刻も早く改善策に取り組むべきだろう。コンサルタントの描くスタンドは所詮幻想に過ぎないが、我々のスタンドは現実世界に存在しているのだ。

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