セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.120『プリペイドか、リライトか』

GS業界・セルフシステム

2006-08-14

 知人が時々利用するというセルフスタンドの話─。知人はいつも千円分給油するのだが、入金機に千円札を挿入し給油をすると、必ずその入金機から“プリペイドカードのようなもの”が出てくるのだという。「再来店を促すポイントカードか何かだろう」と思い、面倒くさがり屋の知人は毎回そのカードを捨てていたのだが、ある時、千円札を入れたのに九百円分しか給油できていないことに気が付いた。そして、いつも捨てていたカードをよくよく見ると裏面に「¥100」と印字されているではないか。つまり、客の金の一部を、客の同意を得ることなく勝手に“人質”に取って、再来店を“強要”するという仕掛けだったのだ。

 「あまりのえげつなさに唖然とした」と知人。私も同感。断っておくが、こういうのをプリペイド方式と呼んでもらっては困る。これは、いわゆるリライト方式というものである。しかし、基本的にリライト方式というのは、客が納得した上で、リライトカードに任意で金額を書き込むものであり、前述のスタンドのように勝手に金券を製造してしまうような仕掛けは、明らかに運用理論を誤っていると断ぜざるを得ない。

 また、リライト方式は、五千円札を入金機に入れて、三千円分給油すると、残りの二千円分をカードに書き込んで“返金”するという仕掛けになっている。店頭には、その旨の案内が掲示してあるとはいえ、ほとんどの客はそれに留意せず、当然現金で返ってくると思われていた釣り銭がカードになって返ってくると、当惑し、憤慨する。次回利用できるお得なポイントが付いていると説明しても、とにかく現金でお釣りを返せということになる。当然だ。

 そもそもリライトカードは、顧客の再来店のための販促アイテムであって、顧客の購買状況を記録したり、それに応じたサービスポイントを書き込んでゆくものである。そのリライトカードに代金決済の役割を負わせると、客に返すべき金を了解も得ずに勝手に預かってしまうという恐ろしいシステムが出来上がってしまうというわけだ。つまり、リライト方式はセルフスタンドのシステムには不向きなのである。

 一方、プリペイドカードは代金決済のためのアイテムであり、客は予算に応じた金額のプリカを自分の意思で購入するのでトラブルはない。また、釣り銭返金のための設備コスト、保守コストなどはゼロである。さらにプリカは、券種に応じて単価ランクを設定し、高額プリカの販売率を高め、一部の顧客を固定化することで、販促アイテムとして活用することもできる。

 このように、リライトカードとプリペイドカードは似て非なるものなのだが、この二つを同一のものと誤解している人が業界内にも少なからずいるようだ。これはプリカ方式派の私にとって、はなはだ遺憾なことである。

 セルフ初期には、リライト方式派は、プリカは一度限りの使い捨てのためランニングコストがかかるとして排斥していたが、いまでは、プリカも使用済みのものを何度でもエンコードして再使用(リユース)できる。もともと、プリカ一枚あたりのコストは、リライトカードの3分の1から4分の1で製造できる上に、エンコード処理はさらに安価でできるため、現在では、プリカ方式は圧倒的なローコストを実現している。

 また、リライトカードは繰り返し客の手によって使用されるため、カードに付着したほこりや皮脂によって、プリカよりもカード詰まりを起こす頻度が高いことも知られている。ほかにも、プリペイド方式がリライト方式よりも優れている点は幾つかあるが、それはまた別の機会に譲るとして、いずれにせよ、セルフ時代の黎明期から続いてきた両者の競争は、ローコスト化に向けてますますバージョンアップしているプリペイド方式に軍配が上がったと私は見ている。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ