セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.121『経営統合』

政治・経済

2006-08-21

 紳士服販売業界のホットニュース、「AOKI」と「コナカ」による「フタタ」争奪戦は、「コナカ」に軍配が上がった。もし、「フタタ」を「AOKI」に奪われていたら、業界4位の「コナカ」と、1位「青山商事」、2位「AOKI」との差は決定的になりかねなかっただけに、今回の経営統合で、はるやま商事を抜いて3位の座を確保した「コナカ」は、胸をなでおろしたといったところではないだろうか。

 しかし、少子高齢化で市場が縮小する中で、来年には団塊の世代の大量退職が迫り、紳士服業界はますます厳しい経営環境に置かれることになるため、今後も活発な合従連衡が進み、熾烈なシェア争いが繰り広げられると業界関係者は予測している。

 もちろん、ガソリンスタンド業界にとって、これは他人事の話ではない。縮小する市場、激化するシェア争い、加速する統廃合─。いずれも、我が業界で現在進行中の事柄であり、過去十年の間に毎年千件を超えるペースでガソリンスタンドは減り続けている。しかも、ここへ来てガソリン価格の大幅な上昇により、軽自動車の販売台数は右肩上がり、レンタカーはハイブリッド車が大人気と、ガソリン販売量の下降にますます拍車がかかっている。

 こうした状況の中で、元売の子会社となる道を選んだ(あるいは選ばざるを得なかった)特約店は数多くある。ある特約店の管理職は、自分の会社が元売子会社となり、しばらく勤めたものの経営方針になじめず、別の特約店に移籍した。しかし、一年後にその特約店も元売子会社となってしまい、再度別の特約店に勤めたがその特約店もまた…という憂き目に会った。

 それにしても、我々の業界では、完全子会社化あるいは同系列同士の合併といった、いわゆる元売主導の経営統合は珍しくないが、特約店自身の意思でなされるそれはついぞ聞いた事がない。例えば、愛知県には全国規模で店舗を展開しているU社とI社が共に本社を置いているが、もしこの両雄が何らかの形で経営統合したら、いかほどのスケールメリットを享受するものかなどと勝手に想像してみたりする。

 あるいは、ある特定の地域内で、中小零細のスタンド経営者が出資し合って持ち株会社のようなものを作り、そのネットワークを生かして仕入れコストや販管コストを抑えることに成功すれば、共存共栄の道が開けるかもしれない。一匹一匹は小さな魚でも、何百匹も固まって泳ぐと、サメさえ怯ませる存在となる。

 しかし、経営統合というのは、実際には「言うは易し行なうは難し」である。報道によれば、「フタタ」が「AOKI」との統合を嫌った理由の一つは、「AOKI」が「フタタ」の店舗網を拡大させるのと平行して、不採算店舗を系列のカラオケルームやマンガ喫茶に転換させてゆくとの方針を示したからだという。同業者とはいえ、企業風土や経営方針の異なるもの同士が一緒になるのは、容易なことではない。「一足す一が三にも、四にも…」というのは経営統合における常套句だが、下手をするとマイナス効果をもたらす恐れもある。

 だが、経営統合の最大の狙いが、いままで二人いた社長が一人になることに象徴されるように、あらゆる分野で合理化を図ることであるのも事実だ。そして、ガソリンスタンドという業種には、統合による店舗網の拡大と、人員削減をはじめとする合理化を同時に実現する有効な手立てがある。それはセルフ化だ。とりわけ、ローコスト・セルフシステムを導入する事で、これまで“一店舗一店長”だったチェーンオペレーションが、一定エリア内の複数のセルフスタンドを一人の店長が監督・管理できるよう改善することが可能になる。そうなれば、店舗数が多ければ多いほど、コストパフォーマンスは上がるだろう。一方、明確なセルフ化計画を持たない経営統合はただの肥満化であって、かえって会社の寿命を縮めることになるかもしれない。

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