セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.122『正直表示』

GS業界・セルフシステム

2006-08-28

 お盆期間中の高速道路のガソリンスタンドの売り上げが、昨年の同じ時期より8割も増えていたことが、東日本と中日本の両高速道路会社のまとめでわかった。高速道の給油所のガソリン価格は、不当な高値販売を防ぐため、前月の全国平均価格にあわせた毎月の上限価格が設けられており、市中価格が急騰すると時間差の関係で割安になる。そのため、8月のレギュラー価格137円は、市中価格より6~7円安くなった。これがテレビなどで取り上げられ、“お盆シーズンの賢いガソリン節約法”などと大々的に報じられたため、各地の高速道路のガソリンスタンドには、順番待ちの車の長い列ができた。

 テレビでその様子を見ていたスタンド経営者の中には、「ぐやぢぃ~、オレの店のほうがもっと安く売っているのに~」と地団太踏んでいた方もおられたに違いない。そうなのだ。多くのガソリンスタンドは、看板表示価格は140円台だが、実際には、会員価格だの、プリカ価格だの、カードだ、パスだ、メールだのと、いろんな手間をかけて値引きサービスを展開していたのだ。その価格は、高速道路の価格と同値か、それより2~3円下まわるものだ。だが、悲しいかなそれらの努力はマスコミに取り上げられず、多くのドライバーは、特別安くもなくサービスも良くない高速道路のスタンドへと流れていった。

 これは、『看板価格イコール販売価格』という、最もわかりやすく、かつ、最もコストのかからない表示方式を定着させてこなかったガソリンスタンド業界へのアンチテーゼとも言える現象だ。互いに相手を出し抜こうとして看板価格から何円引いても、所詮、一般客は看板価格しか見ておらず、その結果「正直価格」ともいえる高速道路のスタンドが思わぬ“特需”に沸いたというわけだ。ガソリンスタンド業界も、これを機に、二重、三重価格の商習慣を改めてはどうだろうか。とりわけ、“ガソリン最大10円引き!”などと謳ってクレジット会員獲得に血道をあげている元売各社には、正しい値札の付け方を学習してもらいたいと思う。

 ところで、9月中旬には、某外資系元売が某コンビニチェーンとのタイアップで、大掛かりな値引きキャンペーンを実施するとのこと。何でも、コンビニで一定額の買い物をすると、レシートが『20リットル5円引き』の割引きクーポンになるらしい。

 素晴らしい!個々のスタンドがいくら「ウチではこんな値引きキャンペーンをやっていま~す」と宣伝しても、その認知度は知れているが、元売りとコンビニがタッグを組んで全国規模でコマーシャルを打てば、その系列店には、お盆のサービスエリア並みの長蛇の列が出来るのではないだろうか。

 えっ?その値引き5円分はだれが負担するかって?そりゃあ、小売店に決まってるじゃないですか。元売りは利益をあげて、株主に配当しなくちゃならないんだから、そんな出血サービスは許されませんよ。ですから、いまのうちにしっかり値上げをしておかないと、キャンペーンに突入した途端、利益がゼロになってしまいますよ。はぁ?そんなキャンペーンには参加しないって?そんな勝手なことしたら、全国CMを見て、レシート片手にやってきた、「20リットル定量給油」の御新規さんから“看板に偽り有り”と叱られちゃいますよ!

 ひと昔前は、価格を看板表示すること自体がご法度とされ、いまでは、看板価格よりも安く売るのが当たり前になっているという変テコリンな業界。セルフスタンドが増えるにつれ、まともな価格表示店が増えるかと思っていたが、姑息な商習慣からなかなか脱却できないうちに、いつの間にか元売りに勝手に値引き額を決められてしまうまでになってしまった。情けないとしか言いようがない。販売価格の決定権を販売業者の手に取り戻さない限り、未来はない。その第一歩は、一物一価を原則とした、正直な価格表示をすることではないだろうか。

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