セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.124『セルフで老化防止』

GS業界・セルフシステム

2006-09-11

 愛知県内のある老舗販売店。数店舗を運営しているが、掛売主体で、どの店も現金を勘定するのは週に一回、幹部が巡回した時に行なうというのんきなものだったのだが、この会社が、先ごろ元売社有のセルフスタンドの運営に乗り出した。元売から強い要望を受けて引き受けたのだそうだが、かつて経験したことのない複雑な精算システムに対応できず、案の定、毎週数万円(!)の現金の誤差が出るという有様なのだそうだ。

 この会社は、一番若い社員で40歳代半ばということで、セルフという新しいシステムに対応できる頭の柔らかい人材がおらず、掛売商売にどっぷり浸かってきた古参管理職たちは、なすすべも無く頭を抱えてしまっているとか。元売の分厚い運営マニュアルを開いてみても、「まるで“外国語”が書いてあるようでとても見る気になれない」という。お気の毒なことです。

 “老舗”と呼べば聞こえは良いが、この会社のように老化現象を起こしている会社は少なくない。社員の平均年齢が高いからといって、必ずしもそうだというわけではないが、過去の成功体験から脱却できないベテラン店長たちが幅を利かせている会社は、往々にして新しいシステムに及び腰である。また、前述の老舗販売店のように、ろくすっぽ研究や準備もせずに、経営者のミエやノリでセルフスタンドの運営に手を出したりすると大混乱に陥ってしまう。

 セルフになると、現金の管理や機器の保守など、どちらかというとベテラン店長が不得手としてきた業務がおもな仕事となる。油外販売をするにしても、いままでのように顔なじみの掛売り客に、タメ口で「水抜き剤入れとくよ~」なんて調子では売れない。さりとて、いまさら新しいことに取り組む意欲も勇気も湧かず、いつの間にか会社のお荷物に成り下がってしまうというわけだ。

 そんなわけで、セルフと聞くと敵意と警戒心をあらわにするベテラン店長は少なくない。経営者もセルフ化を進めるにあたって、最も気を遣うのは現場責任者の意向のようだ。例えば、セルフへの改造の相談を受け、現地で打ち合わせをするためにスタンドに出向くと、経営者から、「まだ、ここのスタッフにはセルフ化のことを何も話していないので、きょうは販促会社の人間との打ち合わせということでお願いします」なんて耳打ちされることが時々ある。また、経営者はセルフにしたいと考えているのだが、店長が反対しているため計画が進まないという会社もある。老舗スタンドであればあるほど、こうした“実力者”が改革の前に立ちはだかるケースが多い。

 実は、ローコスト・セルフスタンドでは、経験豊富な人間が核コアとして存在することが、成功のカギとなる。賃金は安くても、ロイヤリティ(忠誠心)のないアルバイトスタッフのパッチワークで運営するより、ベテランスタッフがしっかり店番してくれる方が、様々な問題に首尾よく対処でき、結果的に無駄なコストを抑えることができる。“セルフになったら俺はお払い箱”なんて怯えたりせず、むしろ、少数精鋭のセルフスタンドにこそ俺の力が必要だという自身と気概を持ってもらいたい。

 ただし、そうなるためには、新しいシステムに恐れずに取り組む勇気が求められる。人間だれしも、不慣れなことに挑むのは不安である。いい歳こいて一から学習することには、ためらいを感じるものである。しかし、いつまでも現実に目を向けることを怖がって、「だれが何と言おうと、俺はセルフには反対だ!あんなものはスタンドじゃねぇ!」なんて息巻いていると、あなたは近い将来、本当に“年寄り”になってしまうかもしれない。もっとも、そんなあなたが会社からいなくなれば、会社は“若返る”のですがね…。

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