セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.125『共生』

GS業界・セルフシステム

2006-09-18

 生命とは、相互に結び合い、依存し合う生物のネットワークである。その証拠はごく身近なところ、つまりあなた自身の体の中にも見られる。善玉バクテリアの大軍は体内の消化管でひっそりと働き、有害な侵入者を破壊し、消化を助け、必要不可欠なビタミンを作り出すことによって、あなたの健康を維持している。その返礼として、宿主であるあなたは食物と恵まれた環境をバクテリアに提供しているというわけだ。

 アリとアブラムシ、クマノミとイソギンチャクなど、自然界には“ギブ・アンド・テイク”のパートナー関係を結んで繁栄している生物がたくさんある。ガソリンスタンド業界においても、そのような共生関係が築けないものかと常々考えていたのだが、この度、興味深い計画に携わることになった。

 愛知県の幹線道路沿いにある4,000坪ほどの商業用地の中に、カーショップとドラッグストアの大型店舗、マンガ喫茶、ラーメン店が建っており、150台を超える駐車スペースも有しているのだが、その真ん中に80坪ほどのガソリンスタンドがある。かつてそのスタンドで、一世を風靡したアルコール燃料「ガイアックス」が販売されていたのだが、2003年に販売中止となって以来、スタンド施設は休止中だった。今回、あるベンチャー企業から依頼を受け、ガソリンと灯油のみを販売するセルフスタンドとして、リニューアルオープンすることとなった。無論ノンブランドである。

 カーショップの店長も、ドラッグストアの店長も、スタンドの営業再開を大変喜んでいる。というのは、スタンド閉鎖以来、来店客から「不便になった」「いつ再開するのか」との声を聞かされていたからだ。ガソリンを入れに来たついでにオイル交換をするとか、ペットボトルを箱買いした帰りに灯油を買ってゆくとか、マンガ喫茶でくつろいだあとやラーメンを食べたあとに給油をしてゆくとか、とにかく、客の利便性を高め、相乗効果をもたらすことが期待されているのだ。

 スタンド側としては、カーショップやドラッグストアの広告チラシに協賛させてもらったり、ポイントカードの景品などに500円のサービスプリカなどを利用してもらったりして、低予算の“便乗販促”が展開できないかと、現在検討を重ねている。名付けて「コバンザメ作戦」。今月下旬には営業開始の予定である。

 このコラムで何度も書いてきたとおり、私は、セルフスタンドが整備工場やコンビニや飲食店を併設するよりも、スタンド自身は軽装備となって、異業種に併設してもらう方が、賢明であると考えている。スタンド淘汰の嵐が吹き荒れているいまの時代には、自然界の知恵に学び、異業種と“共生”することが生き残る道ではないだろうか。

 しかし、カーショップや車検工場なんかと一緒になったら油外商品が売れないではないかとの意見もある。確かに、競争相手と軒を並べるのは自分の首を絞めることのように思える。しかし、不安定な油外収益を追求するのと、確実にコストを抑えるのとでは、どちらが現実的な方法といえるだろうか。

 ミズベイシチドリという鳥は、何とナイルワニの巣の近くに自分の巣をあえて作るという。しかし、ミズベイシチドリは、ワニの食事となるのではなく、見張り番として働くのだ。ナイルワニの巣に危険が迫ると、警告の鳴き声を発してそれを知らせるのである。そのお陰で、この鳥とその巣は、ナイルワニに守ってもらえるというわけだ。同様に、我々も、いままでの常識では考えられなかったような組み合わせをも視野に入れて、異業種との共生を模索すべきなのかもしれない。今後の研究課題の一つである。

 ところで、多くのガソリンスタンドにとって長年のパートナーとなっているのは言うまでもなく元売会社である。しかし、共生には大きく分けて三つの種類がある。双方の生物が益を受ける「共利共生」、一方が他方に害を及ぼすことなく益を受ける「片利共生」、そしてもう一つは、一方が他方に害を及ぼしながら益を受ける「寄生」である。あなたとパートナーとの関係は、この三つのうちのどれに当てはまるだろうか─。

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