セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.126『吹きこぼれ問題について』

GS業界・セルフシステム

2006-09-25

 この間、家内と一緒に近所のスーパーへ買い物に行ったときのこと。酒の肴にと、プラスチックパックに入った惣菜を幾つかかごに入れ、レジで支払いを済ませた。さて、袋に詰めようとした矢先、筑前煮のパックが私の手からするりと滑り落ち、床に散らばってしまった。あぁ、何というもったいないことか…しかし、やむなくごみ箱へ。

 ところで、最近、セルフスタンドにおいて問題になっている“ガソリンの吹きこぼれ”についてだが、その原因の大半は、満タン時に自動停止する機能を無視しつぎ足し給油することや、よそ見などの不注意によるものである。つまり、私が筑前煮を台無しにしてしまったのと本質的には同じことなのだ。

 落っことしたぐらいでパカンと開いてしまうようなパックに入っていたことに、多少不満はあるものの、やっぱり責任は私にあるわけだから、筑前煮は諦めざるを得ない。どうしても筑前煮を食べたければ、もう一度同じものを買わなければならない。当然のことだ。喫茶店でコーヒーをこぼしても、居酒屋でビールをこぼしても、レストランでワインをこぼしても、それはグラスやテーブルのせいではなく、自分のせいである。しかも、店側に迷惑をかけたのだから、客のほうが“ごめんなさい”と言うのが普通じゃないだろうか?

 ところが、ガソリンの吹きこぼれについては、スタンド側の説明が足りないだの、ノズルの形状がどうだの、ホースの位置がこうだのと、まるですべてはスタンド側に非があるかのような言われ方である。スタンド業界も、反論するどころか、消防署員をオブザーバーとして呼び、対策を講じるための講習会まで開催しているという。確かに、ガソリンは危険物であるから、筑前煮をぶちまけるのとは訳が違うかもしれないが、だからこそ、客の側に給油者としての“自己責任”をしっかり認識してもらうべきではないだろうか。

 例えば、計量機の前面に『給油中にガソリンをこぼした場合は、ご自分で清掃してからお帰りください』と貼り紙をしておいたらどうだろうか。もちろん、掃除なんかしてもらわなくても、こぼれたガソリンなど瞬く間に蒸発してしまうからどうということはないのだが、そのように告示しておけば、客はこぼさないように給油しようと気をつけるのではないだろうか。

 また、この問題で責めを負うべきなのは、自動車メーカーではないか。なぜノズルの差し込み具合の悪い車があるのか。なぜエアーの抜け具合が悪い車があるのか─。例えば、BMWの一部の車種は、熟練したスタンドマンでも、こぼさずに給油するのが難しい。そのような車は“構造上の欠陥”があると指摘すべきではないか。ところが、石商組合は、「そのような車には店員が注意を促すなどして対処したい」とコメントするなど、相変わらずの土下座姿勢である。スタンド業界で働く人々のためにも、言うべきことはきちんと言うべきではないか。

 計量機メーカーも、“スマートなボディ”だの、“見やすい液晶ディスプレイ”などと、どうでもいい部分の改良に力を注ぐ前に、もっと給油口の奥の方まで入るような、細く、長く、柔らかい給油ノズルを考案するなど、さらなる研究が必要だろう。しかし、繰り返し述べるが、この問題の第一の責任は、給油する客自身にある。自動車教習所で給油作業を必修課程とするなど、運転者自身に教育を施してゆくことが、何より肝要なことであると思う。

 「すみませ~ん、ガソリンこぼしちゃったんで、雑巾か何か貸してもらえます?」と頼んでくる客には、もちろん快く応じてあげるべきだし、その機会に“正しい給油の仕方”を教えてあげることもできる。しかし、自分のヘマを棚に上げて、「おい!こぼれちまったじゃねぇか!何とかしろ!」なんて言いがかりをつけてくる輩には、毅然とした態度で応じるべきである。「大切な資源なんだからもっと気をつけて給油しなさい!」と叱りつけてやるぐらいでちょうど良いのだ。それが気に食わなければ、フルサービスのスタンドへ行け!

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