セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.127『ハイオクガソリン』

GS業界・セルフシステム

2006-10-02

 1997年から2001年まで、テレビ朝日系列で放映された『人気者でいこう!』というバラエティ番組を覚えておられるだろうか。ダウンタウンの浜田雅功が初めて単独レギュラーとして挑んだ番組だが、この中の人気コーナーに、「芸能人格付けチェック」というのがあった。毎回5人の芸能人が4~6問の「高級品」と「安物」を見分ける問題に挑戦し、正解数に応じて、芸能人のランクを決めていくというもの。最初は全員「一流芸能人」にランクされているが、1問間違えるごとにランクが下がってゆき、最後は「映す価値なし」にまでおとしめられるという、セレブ気取りの芸能人を震撼させるコーナーであった。ちなみに最初の「映す価値なし」となったのは梅宮辰夫であった。ナットク。

 しかし、実際のところ、一本10万円のボルドー産ワインの味と、3千円のカリフォルニア産ワインの味の違いが、どれほどの人にわかるだろうか。あるいは、5億円もするストラディヴァリウスの音色と、5万円の練習用バイオリンの音色とを、どれほどの人が聞き分けられるだろうか─。芸能人たちのランクが下がってゆくのをゲラゲラ笑いながらも、ふと考えさせられたものである。

 さて、例の誤配管によるレギュラーをハイオクとして販売していた事件(三重県津市)であるが、10年に渡り166キロものレギュラーをハイオクと信じて給油していた客のほとんどは、その違いにまったく気付いていなかったに違いない。エンジンの燃料噴射が電子制御になってからは、ハイオクを入れようが、レギュラーを入れようが、その違いはほとんどわからないといわれている。結局、この事件は、「エンジンの調子がおかしい」という客からの指摘で発覚したらしいのだが、その客のクルマは何だったんだろう…。

 誤給油を続けていた当該スタンドの元売(昭和シェル)は早速謝罪したのだが、「一般的にハイオク仕様車にレギュラーを入れて走行しても支障はない」とのコメントを発表した。いままで、「お客様、ハイオク仕様車にはハイオクを入れないとダメですよ!」なんてセールストークでハイオクを勧めていたスタンドは真っ青だ。

 この間、うちのスタンドでも、レクサスに乗った年配のご婦人に、「このクルマにレギュラー入れちゃったんですけれど、大丈夫でしょうか?」と尋ねられた。いつもは別の車に乗っているのだが、きょうはたまたま主人の車に乗ってきたのだという。「大丈夫ですよ。でも、ハイオクを入れるとお車の性能を十分に引き出せますし、エンジンの洗浄効果があるのも事実ですから、半々ぐらい入れてお乗りになったらいかがですか」とスタッフが勧めると、奥様はたいそう喜ばれていた。というのは、いままで行っていたガソリンスタンドでは、「ハイオクを入れないとクルマが壊れる」と言われ続けていたというのだ。「こんなに丁寧に教えていただいたのは初めて」とのことだった。恐れ入ります。

 それにしても、件のスタンドは、よくもまあ10年間も誤給油に気付かなかったものだ。いや、本当に気付いていなかったのかと疑いたくなる。仮に、レギュラーのノズルからハイオクを10年間放出していても気付かなかったというのだろうか。スタンド管理職の経験者の十人中十人が「絶対ありえない」と答えるであろう今回の事件は、徹底的に究明されるべきだ。

 先月20日から26日にも、小田原市の新日石系列のスタンドで、同様の誤給油が起きている。こうした、客の信用を損なうような事件が起こるたびに、ガソリンスタンド、とりわけ客自身が給油するセルフスタンドでは、客の不安と不信が募ってゆく。もうハイオクなんてだれも買わなくなってしまうんじゃないだろうか。こうなったら、全国のガソリンスタンドが協力して、ハイオクガソリンをレギュラー価格で販売する「ごめんなさいキャンペーン」を実施するしかない。

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