セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.132『ソフトバンク』

政治・経済

2006-11-06

 10月24日から始まった携帯電話の番号ポータビリティ。今年4月に総額1兆7500億円(!)を投じてボーダフォンを買収したソフトバンクは、満を持して、通話やメールが「¥0」となる新料金プラン「予想外割」を発表した。「競合相手が千円下げればさらに千円下げる。二千円下げればさらに二千円。どこまででも付いて行く」と孫正義社長は怪気炎を上げていた。“どこかの安売りスタンドの社長みたいなこと言ってやがる”と思ったのは私だけだろうか。「ゴンタフォン」とでも名乗ればいいのに。

 ところが、最初の週末となった先月28日、顧客情報を管理するコンピューターシステムが、殺到した申し込みを処理できずダウン。孫社長がお詫び会見をするという「予想外」のスタートとなってしまった。まあ、新しいシステムの立ち上げ時にはトラブルは付きものである。4年前の、旧第一勧銀と旧富士銀行の統合によって誕生したみずほ銀行のATM障害による大混乱などと比べれば、今回のソフトバンクの失態はまだマシな方である。

 ガソリンスタンドでも、オープンイベントの際は、POSメーカーの社員が、不測の事態に対応できるよう一日中付き合わされているのをよく見かける。「お客さんがどんどん来るようなイベントなら、僕らも緊張感を持って待機できるんですが、閑古鳥が鳴くようなイベントの時は、あくびをかみ殺すのに必死ですよ」とは某POSメーカーの営業マンの言葉。お仕事とはいえ大変ですな。

 とりわけ、セルフスタンドでは、コントロールシステムは生命線である。原則一人、せいぜい二人で運営するセルフスタンドにおいては、精算・集計・監視・案内などをこなすコントロールシステムは、スタッフの目であり、口であり、手でもある。いや、セルフスタンドでは、たとえスタッフがもうろくじいさんであっても、操作が簡単で、故障が少なく、メンテナンスも手間のかからない優れたコントロールシステムさえあれば、何百キロものガソリンを楽勝で販売することができる。ゆえに、セルフシステムにおけるシステム選びは、経営者にとって、携帯電話の機種選びの何百・何千倍も重要な事柄なのである。

 だが、ソフトバンクにとって本当のつまずきとなったのは、システムトラブルをきっかけに、「予想外割」はいろいろな付帯条件があり、それほど安くはならないということを、テレビや週刊誌で叩かれたことではなかろうか。通話やメールが「¥0」になるのはソフトバンクの携帯同士に限られるとか、ソフトバンク同士でも21時から24時台の通話時間は200時間までしかタダにならないとか、時間帯や相手によっては他社より通話料が割高になるとか、「予想外割」のからくりについて、必要以上に“宣伝”されてしまったのは、やはりまずかった。現在ドコモの携帯を使っている私も、キャメロン・ディアスの笑顔と「¥0」のコピーに魅せられて、ソフトバンクにしようかな~と考えていたのだが、当分様子を見ることにした次第である。

 しかし、このような手管は、ガソリンスタンド業界では以前から使われていて、こちらは慣れっこである。例えば、あるセルフスタンドは、周辺より2~3円安い価格看板を掲出しているのだが、店内へ入ると、その価格は1万円プリカを買ったときの価格で、それより安いプリカを購入した場合は逆に他社より2~3円高となってしまう。客は店に入り、プリカを買う時点でそのことを知らされることになる。「予想外だ」─。

 また、あるスタンドは、他店より5~7円も安い価格を表示している。しかし、これ外税価格なのである。これは価格表示法に違反する行為(罰則はない)であり、詐欺と呼ばれても仕方のない商行為である。安値看板を見て、わざわざ来てくれた客をだまし討ちするようなインチキ看板は、「予想外」どころか「問題外」である。

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