セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.135『給油以外はフルサービス!?』

GS業界・セルフシステム

2006-11-27

 「当店は給油以外はセルフサービスです」という告知看板のあるスタンドを時々見かける。ならばいっそのことセルフにすれば良いのに…。そうかと思えば、「当店は給油以外はフルサービスです!」と誇らしげに宣言するセルフスタンドがある。じゃあ、何でセルフにしたんだ?とツッコミを入れたくなる。どちらの場合も、油外収益への未練が見て取れる。

 前者の場合、コスト削減のために、窓拭きや灰皿清掃、送り出しなどの手間を省いたものの、油外商品販売のためには客との接触を保つ必要があり、給油は相変わらずスタッフが行なうというもの。いわゆる「セミセルフ方式」だが、私に言わせれば、セミセルフは“手抜きをしているフルスタンド”であり、ローコスト経営で来店客を増やすことはできても、油外商品の販売には不向きだと思う。

 一方、「給油以外はフルサービス」というセルフスタンド。セルフなのにスタッフが4~5人も待機している店もある。給油している客に、洗車などのメニューボードを持って背後から(!)近づき、「コンニチワ~良いお天気ですね~」などと声をかけ、油外商品のセールストークへと移行する。昨今、こうした、客に給油ノズルを握らせて逃げられないようにしておいてから油外商品を売り込むという戦術が、流行っているようだ。この間も、私の店に来た客が、「お宅のスタンドは、あれこれ売りつけられることがないからいいねぇ」とほめてくださった。ほめられても、素直には喜べないが…。

 私が親しくしている、あるセルフスタンドの経営者は、自分の方から近づいて客に洗車や点検を進めることは決してしないのだが、毎日、オイル交換だの、パンク修理だの、ワックス掛けだの、仕事が入ってくるという。本人曰く「小遣い稼ぎ」ということで、自分ひとりでこなせないほどの注文は受けないという。てっきり、以前からの固定客から依頼されるのかと思いきや、かなりの割合で、「初めて見る顔の人から頼まれる」らしい。

 「こうやってのんびり店番しているだけなのに、客の方から「すみません、洗車してください」って頼みに来て、洗車が終わって出てゆくときには、客のほうが「ありがとう」って言うんだから、なんか変な気分だよね」と彼は笑っていた。口の悪い私が、「こんなポンコツの洗車機で洗ってくれなんて、世の中には物好きな人が多いんだねぇ」なんてからかっていたら、この度、二百万円を投じて中古洗車機を購入してしまった。いよいよ力こぶを入れて洗車収益を稼ぐ気になったのかと思いきや、相変わらず“欲無しの構え”で、「和田さんの車はタダで洗ってあげるよ」なんて言われてしまった。

 また、一年ほど前に、計量機一基のみのミニセルフスタンドを敷地内に作った自動車修理工場では、車検台数や中古車販売台数が伸びたという。猫の額のような敷地面積のうえ、営業時間も夜の8時には閉店してしまうようなスタンドだが(もうちょっとやる気出しましょうよと私は勧めているのだが…)、それでも毎日のように“新顔”の客が来店し、そのうちの何人かが、車検や買い替えの相談にセールスルームに入ってくるという。その工場の支配人に言わせると、「スタンドは整備工場へ新規客を呼び込むためのきっかけの一つに過ぎない」のだそうだ。

 こうした例を考えると、セルフスタンドにおける油外収益というものは、店頭であまりガツガツとせず、ローコスト経営の中でおっとり構えていたほうが良いように思える。私には、「給油以外はフルサービス!」と宣言している店は、「当店は高コストのため油外収益を稼がないとやってゆけません」と白状しているのも同然に思える。もし、そうでないとすれば、なぜセルフスタンドでフルサービスを行わなければならないのか。

 そもそも、セルフ・イコール・ノンサービスと考えることがまちがいなのであって、“こちらからは何もしない”ということは、りっぱなサービス形態のひとつなのである。セルフスタンドが日本中どこにおいても多くの消費者に支持されている理由は、ただ安いだけではなく、スタッフとの接触がほとんどないということに、客が“心地よさ”を感じているのだ、ということを、謙虚に認めるべきだ。セルフの看板を見て来店した客に、フルサービス並みの“押し売り”をするような店は、おばあさんを装って赤ずきんちゃんを待ち伏せする狼のようなものだ、とは言い過ぎだろうか。

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