セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.138『高齢社会』

GS業界・セルフシステム

2006-12-18

 WHO(世界保健機構)は総人口に占める65歳以上の割合が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」と定義している。高齢化社会から高齢社会へ移行するのに、アメリカが70年、ドイツ・イギリスが45年かかったのに対し、日本はわずか24年しかかからなかったのだそうだ。日本での高齢化のスピードは世界に類を見ないほど早く進んでおり、2020年には4人に1人が65歳以上になると予測されている。

 そう言われてみれば、私の店でも高齢者のドライバーを見かけることが多くなった気がする。スタッフを呼ぶ客の多くは、やはり高齢者である。この間も、軽四輪に乗ったおばあさんに呼び出された。いま買ったばかりのプリカを読取機に入れてもすぐに吐き出されてしまうと言う。こちらは“やれやれ”と苦笑しながら、「お客さん、この矢印の付いた方を頭にして入れてみてください」とお願いすると、「あれまぁ、逆さまだったかね。すまなんだねぇ」ということで、一件落着となった。

 また、給油を終えたじい様が、店のトイレに入ろうとしてもドアが開かない。スタッフルームの扉をドンドン叩きながら、「おーい、トイレにカギ掛かっとるゾ!」と叫ぶので、「お客さん、ドアを引いてみてください」とお願いすると、「あれ?開いた。おかしいなあ…」などと言いながらトイレへ入って行った。

 これらの例からもわかりとおり、高齢者の客は、何かの事ですぐに故障と早合点してしまい、うろたえたり怒り出したりする傾向がある。それゆえに、セルフスタンドのシステムは、出来る限り操作の簡単な仕組みにしておく必要がある。これから増加の一途をたどる高齢者ドライバーに対応するためにアテンダーを配置していては、ローコスト・オペレーションが確立できないからだ。

 まあ、高齢者の客がしでかすことの大半は笑い話で済むような出来事なのだが、近年、高齢者ドライバーがブレーキとアクセルを踏み間違えて建物に突っ込んだり、高速道路を逆走して激突したりするニュースを見聞きすると、心配になってくる。

 先日、高齢の男性が、給油を終えて店を出る際、価格表示看板に車をぶつけてしまった。スタッフが店から飛び出し様子を見に行くと、男性も車を降りてきて、自分の車を見て「ああ、大したことないからええわ」と言って、帰ろうとするではないか。

 「ちょっと、お客さん。“ええわ”じゃないでしょ。損害を受けたのはうちの店の方なんですよ」と詰め寄ると、老人はそう言われてはじめて、自分が“加害者”であることに気づき、黙りこくってしまった。助手席に乗っていたもう一人の老人が、「こんな所に看板を置いておいてはいかんのぉ」と言うに及んで、スタッフも、「そんな言い草ありますか。修繕費払っていただきますよ、いいですね!」と叱責。連絡先を控えさせてもらった。

 すぐに“すみませんでした”と謝ってもらえば、看板が少しへこんだ程度のことは見逃すのだが、申し訳ないことをしたという認識がまったく無いようでは黙っているわけには行かない。もし、計量機に激突されたり、販売室に突っ込まれたりされたら、謝って済む問題ではない。高齢者ドライバーには、運転者としての判断力や技術力が確実に低下していることを謙虚に認めてもらい、スタンド構内でも慎重な運転を心がけてもらわないと、暴走や逆走をされてからでは遅い。高齢社会にあって、セルフスタンドが今後取り組まねばならない重要な課題の一つである。

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