セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.145『女性に優しいスタンドとは』

GS業界・セルフシステム

2007-02-12

 少し前の油業報知新聞に、埼玉石協組がまとめた「女性から見た理想のSS像」という報告書の内容が掲載された。「購入決定権」を握る女性客の心をつかむSSとは果たしていかなるものなのか─。県内女性へのアンケートや組合員へのモニター調査などによれば、“らく”“べんり”“おもしろい”の提供がポイントなのだと言う。

 まず、概観は、看板の表示が分かりやすく、道路から見て建物が印象的であることや、POP類がしゃれていることなどを挙げている。スタッフについては、誘導の適切さ、好感の持たれる接客態度、清潔感のある服装、はで過ぎない身だしなみなどが求められている。まあ、女性客に限らず、だれもが望む当たり前のことばかりだ。

 休憩室については、清掃が行き届いている上に、ベビーコーナーや分煙コーナーなどが設けられていたり、女性向けの雑誌などが豊富に用意されているなどの要望がある。トイレについては、衛生的であることは言うに及ばず、臭いや明るさへの気配りや、花を生けるなどの心が和む気遣いなども大切であるという。そのほかにも、「ポイントカードなどの特典がある」、「インターネットができる」、「ミニショップがある」など、いろいろな要望があるとのこと。

 わたしはこの記事を読んで首を傾げてしまった。少なくとも、妻を含め、わたしが知る運転する女性たちは皆、口をそろえて、「ガソリンスタンドは安いが一番!」と言っている。もちろん、汚い店よりきれいな店、無愛想な店員より愛想の良い店員の方が良いに決まっている。しかし、どこで買っても同じ商品を売っているガソリンスタンドという場所に彼女達が求めているのは、1円でも安いことのはずである。埼玉県の女性ドライバーとて例外ではあるまい。

 大体、セルフスタンドが日本にまだなかったころ、元売や石商の幹部、業界コンサルタントたちは、「客に給油をさせるセルフは、日本のドライバーには支持されないだろう。特に女性客には」というようなことを吹聴していたが、今日のセルフの隆盛はどうだ。しかも、それらセルフスタンドで見られるのは、片方で幼い子どもを抱きかかえながら、もう片方の手でノズルを握って給油するママたちの姿である。彼女たちがセルフスタンドを支持する理由は、“らく”だからでも“おもしろい”からでもない。“安い”からだ!

 『男は強くなければ生きてゆけない。優しくなければ生きてゆく資格がない』とは、ハードボイルド小説の巨匠、レイモンド・チャンドラーの言葉だが、これを私なりにセルフスタンド経営に適用するならば、セルフスタンドはコスト競争力が強くなければ生きてゆけない。その上で、家計を預かる女性たちにいつまでも“優しい価格”を提供できなければ、生きてゆく資格がない─ということになる。

 女性に甘言を並べ立てることや、媚を売るような振る舞いをするようなことは一切しないが、女性が本当に助けを必要としている時は、いつでも役に立つ─そんな、ハードボイルドなスタイルが、理想のセルフスタンドではないかと思う。

 しかし、昨今、ハンフリー・ボガートや高倉健のような「男」はあまり流行らないご時世だ。やはり、セルフスタンドも、もっと女性に対して積極的に優しさを振りまかなければいけないのかも…。それなら、いっそのこと、身長180センチ以上、年齢25歳以下のイケメン男性ばかりを集めたスタンドというのはどうだろう。周辺より20円ぐらいガソリンが高くても、“彼に接客してもらえるなら”と女性客が続々と来店してくださるかも。人気ナンバー1のイケメンスタッフの手にかかれば、普段は財布のヒモを固く結んでいる女性客も、次々に洗車や車検の予約を…なんてことになったりして。

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