セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.151『救援基地』

GS業界・セルフシステム

2007-03-26

 25日午前9時42分ごろ、石川県の能登半島沖を震源とする地震があり、七尾市や輪島市で震度6強を観測した。家屋の倒壊や道路の陥没などの被害が生じ、午後になっても余震が続いた。“地震大国”日本では、いつ、どこで同様の災禍に見舞われても不思議ではない。全国民が、地震への備えをしておくべきであろう。

 そんな中、ガソリンスタンドは、大規模災害の際、被災者支援の拠点として見直されている。ガソリンスタンドは、消防法による厳しい建築基準により、タンク上の地盤は厚さ30センチの鉄筋コンクリート、それ以外の敷地も同15センチのコンクリートで覆われているうえ、建物は耐火構造が義務付けられている。さらに、高さ2メートルの防火塀で敷地を囲むため、火災にも強い。

 あの阪神大震災でも、ガソリンスタンドはほとんど被害に遭わず、新潟県中越地震では、自家用車で避難生活を送っていた人々に、燃料を供給し続けた。ガソリンスタンドは、まさに“堅固な避難所”なのだ。ここに、停電時の自家発電装置と、地下貯水タンクを完備すれば、ガソリンスタンドはりっぱな「救援基地」となる。行政当局は補助金を出してこうしたスタンドの拡充を積極的に支援してもらいたいものだ。

 また、ガソリンスタンドに応急救急セットを常備し、スタッフは救命士としての教育・訓練を定期的に受けるよう取り決めることも、ガソリンスタンドの社会貢献力を高めることに寄与する。地元の消防署との緊密な連携によって、一朝有事の際、スタンド従業員が地域の被災者たちを救援する存在となるなら、業界で働く人たちの地位向上にもつながるのではないだろうか。

 …と、ここまでは理想的なことを書いてみたものの、実際はどうかと言えば、大半のガソリンスタンドは、「救援基地」と呼ぶには程遠い状態だ。そもそもガソリンスタンド業界自体が、いま全国規模で、需要の減退と市況の低迷という“災害”の真っ只中にあるのだから、起きるかどうかもわからない災害に備えて設備投資をしたり、人材育成をするようなお金や時間はないというのが現状ではないだろうか。

 事実、毎年千件を超えるペースでガソリンスタンドが消滅している。いつまでもこんな状態の業界だから、「貧すれば鈍する」の言葉どおり、精神の働きまで愚鈍になり、社会貢献などに取り組む余裕などなくなってしまうのも仕方のないことと言わざるを得ない。スタンド業界の過当競争は、こうした分野で地域に損失をもたらしていると言える。

 少し前に、科学雑誌「ネイチャー」は、「地球温暖化の影響で今後、地震や火山の噴火が世界中で起こりやすくなる可能性がある」という論文を掲載した。その理由として、氷河の融解や潮の流れの変化による「海水の大規模な移動」が地殻に新たな“ひずみ”を生じさせる可能性があるとのこと。また、近年頻発している巨大台風の低気圧が、地殻の隆起やマグマの上昇を引き起こす可能性があるのだという。

 もし、これが事実とすれば、地球温暖化の“A級戦犯”である石油業界の責任は大である。まずは、元売各社に率先してもらい、今後、元売が建設・運営する大型セルフスタンドはすべて、地震災害の際の救援基地としての機能と態勢を備えた店舗にすべきではないだろうか。「わたしたち○□石油グループは、このようなスタンドを全国に展開して、社会に貢献しております」と宣伝すれば、企業イメージのアップにもつながるはずだ。

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