セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.153『ナントカ洗車』

GS業界・セルフシステム

2007-04-09

 松岡利勝・農林水産大臣の事務所費問題。農水相の資金管理団体が、水道代や冷暖房費が無料の議員会館に事務所をおきながら、二〇〇一年から〇五年までの五年間に約二千八百八十万円の光熱水費を計上していることを問い質された大臣、苦し紛れに「私のところは水道にいま、ナントカ還元水といったものを付けているので…」なんて言っちゃったものだから国民の怒りが集中、内閣の支持率にも影響を及ぼしている。

 ところで、ガソリンスタンドの中には、還元水処理洗車機なるものが導入されているところがあるらしい。これは水道水の処理にトルマリンという鉱石を使用し、水の電気分解という特性を利用していて何回も洗車していくうちに洗浄効果が向上し、汚れがつきにくくなり、撥水処理されるというものだそうだ。愛知県でそんな洗車機を置いているガソリンスタンドがあるのだろうか。ご一報ください。あるいは、店頭に『今話題の“ナントカ還元水”で洗車します』なんて看板を出しておいてくれると嬉しいのだが…逆効果か?

 ナントカ還元水はともかく、どこのガソリンスタンドも大抵、洗車機が置いてある。アイテム数が減少の一途をたどるスタンドの油外商品類の中で、洗車はガソリンスタンドにとって“最後の砦”と呼ぶべきものだけに、どの店も一生懸命である。洗車のメニューも様々で、「ポリマー」「ワックス」「シャンプー」などはまだわかるが、「ウルトラ」「やわらか」「極上」などは、一体全体どんな洗車なのかわからない。全部まとめて“ナントカ洗車”と呼びたくなる。

 洗車機を置いておくだけで利益が上がるのなら苦労はないが、そんなに甘くはない。台数を稼ごうとして、一台三百円の洗車をさらに洗車カードで半額にしていたら、電気代、水道代、洗剤代などを差っ引くと赤字になってしまう。恵みの雨ならぬ黄砂のおかげで、目下フル稼働の洗車機だが、ブラシの損耗は進むうえ、汚泥槽も流れ出た黄砂で通常の何倍も溜まっていることだろう。それらすべてのコストを補ったうえで、さらに利益を上げるには、1台三百円をさらに半額にしていたのでは、とてもおぼつかない。『店長、先月はこんなに洗車売り上げがあったのになぜ赤字なんだ!?』『はい、社長、あの~それは“ナントカ洗車”が予想以上に多かったものですから…』─。

 そんなわけで、洗っても洗っても儲からないドライブスルー洗車に見切りをつけ、手洗いの高級洗車を主力商品としているセルフスタンドもある。「超ピカ」とか「爆白」などという派手な名を冠した1台五千円から一万円の洗車で「量より質」を目指す戦術だが、人手の確保、技能者の育成に苦労しているスタンドが少なくないと聞く。また、洗車収益に注力するあまり、気がついてみればフルサービスのスタンドよりも大勢のスタッフを配置しているセルフスタンドもある。これぞいわゆる「日本型セルフ」。費用対効果はどうなっているのだろうか。

 結局、いくら洗っても利益が上がらないため、「シャンプー」と名付けておきながら、洗車機タンクの洗剤を水で薄め、全然泡立たない洗車をしている店があるかと思えば、技術がおぼつかないため、「極上」とは名ばかりの雑な仕上がりで、いっそ“手荒い”洗車と名付けたくなるような洗車もある。ドライバーの側にしてみれば、そんな洗車は、農水相の「ナントカ還元水」同様、到底納得できないだろう。

 油外収益を追求しない「給油だけセルフ」は生き残れないと言われて久しいが、人や設備を投入した上で、「ナントカ」の一つ覚えで、闇雲に安売り洗車キャンペーンを張るセルフスタンドには、ちゃんと利益が「還元」できているのかと問い質したい。

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