セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.160『煮えガエル』

オピニオン

2007-06-04

 ゆっくりと、それとは気付かぬまま抹殺されることを、“煮えガエル現象”という。水の入ったナベの中のカエルは、ゆっくり火にかけられ、水がぬるま湯になり、やがて熱くなってきても気付かずにいるものだから、最後は自分が煮えてしまってもわからないままだというのだ。カエルが本当にそれほど鈍感な生き物なのかどうか、実験したわけではないのでわからないのだが、ガソリンスタンド業界にはそのような人間が確かに生息している。

 1年ほど前に、ある地方都市のスタンド経営者からセルフに改造したいとの相談を受け、出向いたところ、まだ最終決定したわけではない、選択肢として考えているだけ、と最初の話からかなりトーンダウン。これからはセルフとセルフの競争になる、一日でも早くローコスト・オペレーションの体制を整えておかなければ生き残れませんよとの私の警告にも、「いまウチに来ているお客さん(掛売り)のことも考えないと…」と及び腰。それじゃあ、じっくり考えてみてください、とその場を引き取った。

 そして、1年後。近くのスタンドがセルフにリニューアルしてから、減販に歯止めがかからず、1年前の半分に減ってしまったということで、また相談を持ちかけられた。今度こそ、セルフ化して対抗するしかないでしょうと勧めると、この期に及んでまだ、「商売というのは客とのコミュニケーションが基本」などと寝言を言っている有様。だったら、なぜオレに相談しに来るんだ!?

 「いいですか社長、近所の○□石油がセルフになったあと、あなたの店にセルフサービスを嫌う客が流れてきて、増販したというのなら、あなたの説が正しいということになります。ところが、いままであなたの店に来ていた客まで、セルフに獲られてしまっているのは、どうしてだと思いますか?」

 「………」

 「幸い○□石油のセルフシステムは、かなりコスト高のシステムです。すでに遅れを取ってはいますが、いまからローコスト・セルフで対抗すれば、必ず挽回できます。もちろん、いままでのように夜の8時に店を閉めているようではダメです。可能なら24時間営業、それが無理でも11時ぐらいまではがんばらないと。はじめのうちは、社長と奥さんとで店番すればいいんですから」

 「でもねぇ、まだ掛けのお客もいるし…」

 「社長、月々30㌔キロか40㌔そこそこしかないのに、まだ失うことを恐れているんですか?それらすべてを補って余りある新しい客を獲得しようとは思いませんか?」

 「それでも、ホントにセルフで挽回できるかねぇ…」

 ダメだこりゃ。話をするだけ時間のムダだ。煮え切らないというべきか、煮えあがっていると言うべきか。セルフ化するか、廃業するかして、いますぐナベの外へ飛び出さなければ、1年後にこの経営者は見事な“煮えガエル”と化していることだろう。カエルはカエルでも“ど根性ガエル”になれ、と言いたい。

 こうしたスタンド経営者の何と多いことか。元売からはとっくに見放され、馬鹿高い仕入単価で買わされていても、それに気付かず、あるいは気付かない振りをして、何の行動も起こそうとしない。セルフ化を検討していると言いながら、いざ具体的な計画策定を促した途端、たちまち及び腰となり、言い訳やら逃げ口上を並べ立てる。エエ加減にせえ!自分の店を取り巻く環境が、どんどん沸騰してきているというのに、ナベの底でじっとしているその忍耐力、いや、鈍感力には、ある意味、敬意を表すべきかもしれない。

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