セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.161『コムスン』

政治・経済

2007-06-11

 介護報酬を不正請求していた問題で, 厚生労働省は,訪問介護大手「コムスン」の全国約1,600ヶ所の介護事業について,来年4月以降,指定の更新をしないよう都道府県に通知した。介護事業の現場では,ずいぶん前から人手不足が叫ばれていたので,急速な事業拡大を続ければいずれ何らかの問題を引き起こすだろうと思っていたが,介護保険制度を悪用して,水増し請求で儲けるとは,ひどい話である。決して高いとはいえない給料で,心身をすり減らしながら日夜働いている介護スタッフに対する,裏切り行為とも言える。

 しかし,24時間有資格者が事業所に常駐していなければならない,という法令を遵守するのは容易なことではない。ガソリンスタンドが良い例だ。昼間はともかく,夜間から深夜にかけては,危険物取扱者が不在のまま営業をしているガソリンスタンドは,ざらにある。「コンプライアンス」をモットーに掲げる某外資系元売の100㌫子会社が運営するセルフスタンドでも,併設されているコンビニの店員が片手間仕事でスタンドを見ている有様。「君,危険物の免許持ってる?」と聞いてみたら,「何っスか,それ?」─。

 やはり,コンビニ併設の別のセルフスタンドでは,アイランドに設置してある精算機が次々にこじ開けられて360万円もの現金を獲られてしまったという。コンビニの店員が,つり銭切れのアラームが鳴ったので確認しに行ったら,すでに盗まれたあとだったとか。その店員が危険物の有資格者だったかどうかは別として,ちゃんと店番していなかったことだけは確かである。これなら,犬にでも店番をさせておいたほうがマシである。

 慢性的な人手不足に悩まされているガソリンスタンド業界では,最低限の店番すらできないのが現状で,消防法第13条が定めるところの,「危険物取扱者免状所持者の立会いのもとでの給油行為」を24時間365日実施するのは非常に難しい。もし,行政当局が厳格な調査と指導を実行したなら,全国で相当件数のガソリンスタンドが営業停止処分を受けるのではないだろうか。

 私は,常々,ガソリンスタンドはセルフ化を機軸として,ローコスト経営を追求すべきであると考えている。しかしそれは,スタッフに過重な負担をかけながらでは,長続きしない。とはいえ,法令をなおざりにすることはできない。燃料油販売だけでは採算が採れず,油外収益でそれを補填しなければならないような,いわゆる“日本型セルフ”では,いずれオペレーションが崩壊すると私は見ている。

 とりわけ,大型セルフ店の管理職は,頭数を満足にそろえることができない状態で,やれ車検だ,洗車だ,オイルだとはっぱをかけられたうえ,「在庫管理は正確に」,「清掃は徹底的に」,「書類提出は期限内に」と命じられ,おまけに,24時間365日「コンプライアンス!」。

 それでは体が持たない,家庭が崩壊する,人員を増やしてくださいと要請すると,帰ってくるのは「ローコスト!」。じゃあ,せめて俺の給料上げてくれ,と要求すれば,またしても「ローコスト!」。これでは 夢も希望もない。優秀な人材も,成長する前に潰れてしまう。

 経営者の事業欲を満たすために,現場の人間に度を越えた犠牲を強いる事業は,いずれそのひずみが事故や不正を生み出し,破綻する。コムスンの事件は,私たちの業界にとって,決して対岸の火事ではない。

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