セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.162『いつでも、どこでも』

政治・経済

2007-06-18

 今月13日、英会話学校の最大手「NOVA」が、誇大な広告や虚偽の説明で生徒を集めたうえ、中途解約時に高い精算金を要求しているとして、経済産業省は、一部業務を6ヵ月間禁止する、業務停止命令を出した。だいたい「いつでも、どこでもレッスンの予約可能」というサービスを、全国40万人もの生徒すべてに提供するなどということは、無理な話である。こんないい加減なキャッチコピーを信じた客にも認識に甘さがあったと言わざるを得ない。

 元売会社の中にも、自社系列のスタンドは、どこもキレイで、接客はさわやかで親切であるかのような印象を与えるコマーシャルを流しているところがあるが、NOVAほどではないにせよ、これも少々誇大な宣伝ではないか。CMのイメージが良ければ良いほど、現実とのギャップが大きくなり、かえって逆効果になりはしないかと、勝手に心配してみたりする。

 また、「サービス日本一!」なんて看板を出しているフルサービスのスタンドをたまに見かけるが、厳密に言えばこれも誇大広告。ま、そんな看板、だれも信じていないからいいようなものだが…。「地域一番安」という看板にもイエローカードを出したい。「地域」とはどこまでの範囲のことなのか、「一番安」のさらに下をくぐる元売販社のクレジット会員やメール会員の価格の存在を突きつけられたらどうするつもりなのか。虚偽宣伝だと訴えられる危険がないとはいえない。

 NOVAの「いつでも、どこでも」というサービスは、会社の成長とともに実現困難なものとなっていった。「おできとお店は大きくなるとやがてつぶれる」といった人がいるが、なかなかなの名言だと思う。もちろん、店舗数を増やしてゆくことで、仕入コストを抑えたり、ネットワークで顧客を囲い込むことなどができるのだが、その一方で、ほぼ例外なく直面する問題が、“人”の問題である。

 NOVAやコムスンのように、会社の成長に人材が追いつかないと、どこかで無理や無茶をして行き詰まる。一方、当初のサービスをあくまで追求・拡大させようとすれば、人件費が重くのしかかり、遂にはそれに耐え切れなくなってつぶれてしまう。「おできとお店」の“格言”は、企業の成長がはらむ脆弱性を端的に言い当てていると思う。

 近年、各地で比較的大手のガソリンスタンド会社が、倒産したり、売却されたりしている。その理由は様々であろうが、やはり、拡大した店舗網を維持しようとして人件費がかさんだことが大きいのではないだろうか。重い人件費を維持するにはあまりにも薄い燃料油マージン。ならばと人件費を削れば、サービス力は低下する。悪循環の中で売上の減少に歯止めがかからないまま、やがて「おでき」のように…。

 一方、店舗をセルフ化させることで、さらなる成長を図る会社もある。しかし、元売の系列店では、サービスの均質化を果たすために、指定されたPOSシステムや什器類など、本来はセルフスタンドに必要のないコストをかけさせられる。元売のクレジットカードの手数料負担は、ボディブローのように系列店にダメージを与えている。コンビニと勝手に提携した元売の系列店は、全国統一の値引きキャンペーンに参加しなければならない。これらは、元売の「いつでも、どこでも」というサービスを実現するための、系列店が負わねばならない“しわ寄せ”である。

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