セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.164『素直に、臆せず、正直に』

GS業界・セルフシステム

2007-07-02

 6月30日の土曜日、全国的にガソリンスタンドの店頭は賑わいを見せたようだ。それもそのはず、例によって、NHKニュースで「来月はガソリン価格が140円台になりそうです」と“宣伝”してくれたため、値上がりする前にと駆け込み給油をする客が多数来店したのである。愛知県の“セルフ銀座”日進市では、なぜか6月下旬からガソリン価格が値下がりしていたが、我が「セルフスタンド日進東」は、それに追従することなく(というか、追従できずに)高いガソリンを売り続けていた。そんな店でも、その日、通常より3割増しの販売量を記録した。いや~お客様というのはありがたいものですな。

 それにしても、「明日から値上がりするから今日中に満タンにしておこう」というお客様の賢明な行動を徒労に終わらせるような我々の愚行─“上げ遅れ”“上げ渋り”“上げ損ない”が今回も繰り返されている。「な~んだ、値上がりしねぇのか。慌てて満タンにして損したなぁ」と思っている客が少なからずいるのではないか。

 省エネと少子化の影響で、国内のガソリン需要は減退の一途。閑古鳥が巣作りし始めたスタンドの経営者は、自分の客が他店に獲られているとの恐怖感に襲われる。金縛り状態にあったまま、利益を遺失してゆくのだ。ああ、もったいない。そもそも、そこまでして価格を据え置いたところで、減販の引き潮をとどめることは叶わないのだから、素直に、臆せず、正直に上げたほうが良策だと思うのだが…。

 隣の店を出し抜こうと、看板価格から「○円引き」の表示もすっかり定着した昨今だが、この間、客からこんな話を聞いた。「きのうは3円引きかと思ったら、きょうは4円引き。先月は5円引きだったのに、今月は2円引き。まぁ、値引きしてくれるのはいいんだけど、あんまりコロコロ変わると、得しているのか損しているのか分かんないよねぇ」─あまり小細工が過ぎると、かえって客の不信感を買うという一例である。

 もっとひどい話をご披露しよう。私の知人の経験したことだが、130~131円の看板が並ぶ街道沿いで、125円の看板のセルフスタンドを見つけた。先払い方式のため、精算機に二千円を投入して、給油。16㍑入るはずが、15.2㍑でストップし、精算機からカードが出てきた。見ると、「100円」の印字。そのカードを入れて給油しようとしたが、計量法により100円分だけの給油は不可。結局、彼はいまも100円をそのスタンドに“人質”に取られたままである。「残りの100円を使うためには、またあの店に行って給油しなきゃいけない。二千円払ったのに15.2㍑しか売ってもらえなかったということは、結局単価は131円ちょっとと言うことですよね。125円の看板に釣られて入ったけど、結局ほかの店とそう変わりない価格になっちゃって、何だか騙された気分ですよ」─

 高止まりを続けている市況の中で、少しでも販売価格を安く“見せかけて”客を集めたいとの思いが、こうした姑息な手段を生み出すのであろう。そこまでしてガソリンを売って、一体何が得られるのだろうか。むしろ、何かを失うことにならないだろうか。

 もはや、増販を前提としたスタンド経営は行き詰まろうとしている。破竹の進撃を続けてきたセルフスタンドも、これからは販売量が横這いなら良い方で、むしろ、ある程度の減販を想定した計画を立てて臨まねばなるまい。ゆえに、いまやるべきことは速やかに仕入コストを吸収し、販管コストを抑えることなのだ。素直に、臆せず、正直に─。

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