セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.167『在庫』

政治・経済

2007-07-23

 またしても新潟県を襲った大地震。被災地の方々のご苦労を思うと、“がんばってください”などという無思慮な言葉などとても口にできない。ただただ一日も早い復旧を祈るばかりだ。

 今月16日に地震が発生した直後、NHKのアナウンサーは、「○○町役場の防災課の○○さんに今の様子をお聞きします」と、もっぱら役場の人たちに電話で被害状況を尋ねていたが、考えてみれば、その日は祝日だった上、みんな家屋からの脱出やけが人の搬送におおわらわで、役場に被害状況などを知らせるなんて事は後回しだったはずだ。そのため、役場の人の返事は総じて「いまのところ被害の報告は受けておりません」とか「けが人の情報は入ってきておりません」といった程度のものだった。

 ところが、しばらく経って、「では、国道○号線近くのガソリンスタンドに勤務しておられる○○さんに…」と振られるや、「道路が波打っている」とか、「家が幾つも潰れている」といった生々しい被害状況が報じられ始めた。地震発生直後の様子は、役場なんかより、ガソリンスタンドの人に尋ねたほうがましだと思った次第。

 今回の地震で、自動車のシリンダーやピストンなどを製造する工場が操業できなくなり、トヨタ自動車はグループの全工場を操業停止せざるを得なくなった。減産規模は2万6千台に上るとか。シリンダーなどは高い精度が求められる部品のため、供給が軌道に乗るにはまだしばらく時間を要する上、道路などの復旧も進んでいないとの事。“トヨタがくしゃみをすれば…”の我が愛知県では、トヨタやアイシン、デンソーなどの下請けや、そのまた下請けも製造ストップ。想定外の“夏期休暇”を取らざるを得なくなった人たちがたくさんいる。

 このような事態に陥ったのは、言うまでもなくトヨタの誇る「カンバン方式」のためである。ジャスト・イン・タイム─必要な部品を、必要な数だけ、必要な時に持って来いという部品メーカーに対するトヨタの要求は、一たび今回のような出来事が生じると、1台も自動車が作れなくなるという状況を引き起こすのだ。在庫を持たないという徹底したコスト削減システムがはらむ脆弱性を垣間見た気がする。

 そして、在庫といえば、石油製品。今回の地震で、世界を震撼させた柏崎刈羽原発の事故。最初のうちは、変電施設でボヤが起きた程度の発表だったが、日が経つにつれてやっぱり放射性物質が微量だが漏れていた。対応のまずさや報告のいい加減さに東京電力に非難が浴びせられ、安全が確認されるまで操業は停止。そうなると、夏季電力を賄うために火力発電所がフル稼働ということになる。つまり、石油の出番というわけだ。ところが、石油元売各社の製油施設は、今年も“恒例行事のように”あちこちでトラブル続出(ホントに定期修理したの?)で在庫が逼迫、石油連盟会長は「これから急いで増産いたします」との事。日ごろから在庫をしっかり持っておけば慌てることもないのに─。

 例えば、今回の震災地・新潟には、かつて日本石油や昭和石油の製油所があったのだが、今では上越市にある帝国石油の比較的小規模の製油所があるだけ。合理化や採算性を重視して、製油所を統廃合してきた日本の石油元売会社だが、稼働率を上げた途端にトラブル続出、挙句の果てに「安定供給」という最重要命題すら履行が危うくなる始末。自動車メーカーも、石油メーカーも、効率ばかり追い求めず、ある程度の在庫を持つべきではないだろうか。え?ダブついたガソリンはどうするかって?じゃんじゃん業転で流せばいいじゃん。独立系セルフスタンドが売りまくり、安値安定すれば、国内の自動車販売台数も少しは上向くかも?!

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