セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.171『大きいことは、いい事か?!』

GS業界・セルフシステム

2007-08-20

 ずいぶん前に聞いた話なのだが、ある地域で市況是正のためにガソリンスタンドの経営者や店長たちが集まった。(いわゆる「ブロック会議」というやつだ)会議の席上、安売りをしている独立系スタンドの経営者に非難が集中した。ある大手フリートの店長はこう言って脅したそうだ。

 「うちの会社は全国に200店舗もあるんだ。オレの店が1ヶ月間ガソリンをタダで売ることだってできるんだぞ!」─。それを聞いた出席者たちは震え上がり、その店長をなだめようとした時、当の安売り店の経営者がこう言い放った。

 「ああ、どうぞ。タダでも何でも好きな価格で売ればいい。おたくは200店舗もあるんだから、一店舗ぐらいタダで売ってもどうってことないだろうからね。ただし、あんたの店は間違いなく全店でダントツの赤字店舗になるだろうよ。売れば売るほどね。そして、その赤字店舗の店長はあんただ。あんたの給料はそれで上がるのかね?」─。その店長は黙ってしまったそうだ。仮に、この店長のような大馬鹿者が200店舗全店にいたとすれば、その会社は膨大な赤字を出して潰れることになる。

 昨今、元売主導で大型ディーラー同士が合併し、スーパーにウルトラが付くほどの巨艦ディーラーが次々に誕生している。しかし、その会社の資本金が幾らだろうが、店舗数が何軒だろうが、売上高が幾らあろうが、そんなことは、その店の利用客にとっては関係ない。所詮、ガソリンスタンドの戦いはその地域における局地戦なのだ。

 冒頭の独立系スタンドの経営者は、相手の会社がどれだけ店舗数を擁していようと、それらが束になってかかってくるわけではないし、むしろ店長会議で赤字店と呼ばれることが、現場責任者にとってどれほど屈辱的なことであるかを知り抜いていたので、恫喝にも動じなかったというわけだ。

 また、あるセルフスタンドの店長は、以前勤務していた大手ディーラーの管理職から、戻ってこないかと誘われた。丁重に断ると、その管理職は、「ところで君がいま勤めている店は、月間何キロぐらい売るんだい」と尋ねてきた。200キロぐらいと答えると、「そんな店で君は満足なのか?ウチの○○店は、いま500キロを越えて、もうすぐ600キロに届きそうなんだ。そういうスタンドで働くほうが夢があるじゃないか。もっと誇りの持てる職場で働けよ」と管理職。しかし、店長はこう聞き返した。「ところで、その○○店は毎月幾らぐらい利益が出ているんですか?」

 しばらく沈黙があったあと、「いまはまだ、値引き券や景品を出したりしているから、利益を出すところまでは行っていない」「利益が出ていないってことは、赤字ですか?」「…うん、今はまあそんなところだ…」「へぇ~、500キロも売ってるのに赤字なんですか。ウチの店はローコストでやってるんで、200キロでも何とか利益が出てますよ。500キロも売って赤字のスタンドなんて、逆に恥ずかしくないですか?」「………」─。

 「僕はあの会社にいたからわかるんだけれど、赤字額は百万は下らないと思いますよ」とは、その店長の言葉。「大手、大手って威張っているけど、所詮は元売の油を売らされている奴隷ですよ。無茶な量販させられた挙句、赤字は油外を稼いだり、人件費を削ってカバーしろと叱られる。誇りが持てるどころか、情けなくなりますよ」─。

 その昔“大きいことはいいことだ~”というCMソングが流行ったが、今日のガソリンスタンド業界では、“小さいことはいいことだ~”と歌いたくなる。

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