セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.174 『給油活動の継続』

政治・経済

2007-09-17

 安倍首相が辞めてしまった。健康状態の悪化が理由とのことだが、施政方針演説をやっておきながら辞任してしまうのは何とも不可解だ。まあ、早晩辞めざるを得ないだろうと言うのが大方の見方だったのだから、それほど驚くことでもないのかもしれない。首相自身の説明によれば、「インド洋上における海上自衛隊の給油活動を継続させるために、政局の打開を図ることにした」という事だが、参院で過半数を握る野党から“無料ガソリンスタンド法案”と揶揄されたテロ特措法の延長が難しいので辞めたとなると、日本の首相はアメリカにとってはガソリンスタンドの店長程度だったということか。

 それにしても、給油活動に「職を賭す」とまで言っていたぐらいだから、安倍首相は日本で最も仕事熱心なガソリンスタンドの店長だったと言える。しかし、あいにく、いま日本のガソリンスタンドはどんどんセルフ化されているから、“給油活動”は店員ではなくて、客がしている。つまり、業界においては「職を賭す」ほどの事ではなくなっているというわけ。件の洋上給油も、給油する行為が集団的自衛権の行使に当たるというのなら、アメリカ軍艦にセルフ給油をお願いすればいいんじゃないだろうか。インド洋上に給油所を作って、現地のバイト店員が監視カメラを見ながら店番をする。時々、漁船相手にカード会員の獲得なんかもしたりして…。

 冗談はさておき、インド洋上に限らず、どんな地域でも、行きつけのガソリンスタンドが閉鎖されてしまうと不便である。私の住んでいる名古屋市瑞穂区では、ガソリンスタンドが次々と閉鎖されている。ご近所の方は皆一様に、「この辺は近所にガソリンスタンドがないから不便だわ」とおっしゃっている。この地域に限って言うと、閉鎖されたスタンドのほとんどは敷地面積が200坪にも満たない小規模店舗で、所有者は元売だ。広さの割には固定資産税などがかかる上、タンク容量が小さく配送コストもかかる。それに、何よりセルフ改造ができないといった理由で閉鎖したのだろう。運営店の都合より、元売の規準で閉鎖されてゆくそれらのスタンドは、しかし私の目には魅力的に映る。

 このコラムで、これまでに何度も書いたとおり、採算の取れるセルフスタンドは、せいぜい200坪程度の広さで、計量機が2基程度の小型店舗である。改造コストが1,200~1,500万円程度で済むうえ、人件費や運営費も抑えることができる。その上、都市部のスタンドは、新規参入者が少なく、競争が起きにくい。多くの競合店舗が閉鎖されてゆく中で辛抱して営業を続けていれば、気がついたらその地域で文字通りのオンリーワンのお店になっていた、なんてこともあり得る。そのうえで、ローコスト・セルフに改造すれば、量販せずとも、そこそこの経営が成り立つはずである。

 「ああ、あのスタンドも閉鎖してしまった…もったいないなぁ」─名古屋市内で車を走らせていると、そういう状況をしばしば目撃する。「閉鎖する前に、一言俺に相談してくれれば良かったのになぁ…」などとエラそうなことをつぶやいたりするきょうこの頃である。一方で、隣の日進市では、国道沿線のわずか500メートル足らずの間に、3件のセルフスタンドが軒を並べている。どれも500坪近くある巨艦店だ。さながら連合艦隊のようである。

 元売主導、大手主導のセルフ政策は、ガソリンスタンド業界において地域間格差(この場合は、都市部が過疎化し、地方が過密化)を生じさせてしまった。この際、都市部のスタンド経営者の方々には一念発起していただき、ローコスト・セルフシステムの導入によって、経営を続けて行ったもらいたい。それこそまさに、給油活動の継続に「職を賭す」と言える。

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