和田 信治
GS業界・セルフシステム
2007-10-01
「いや~和田さん、いっぺんお会いしたかったんですよ~」─東北地方から来られたスタンド経営者の男性は、3年ほど前からこのコラムを毎週欠かさず読んでくださっているという。しかも、ただ愛読しているのではなく“経営の指南書”としているというのである。毎週、テキトーに書いているこのコラムを“経営の指南書”なんかにしていいのか?!私はすっかり恐縮してしまった。
彼は3件のガソリンスタンドやコンビニ、板金工場などを経営していたのだが、1店舗をセルフスタンドに改造するに当たって、1店舗は閉鎖、もう1店舗は7人いた従業員を4人に減らした。板金工場は、古参従業員に“のれん分け”として売却。コンビニ経営からも撤退した。さらに、改造したセルフでは、油外販売をやめ、社長と奥さん、娘さんが交替で店番をしながらの24時間営業を実践している。すさまじいリストラクチュアリングである。これらの施策によって、経営は劇的に改善された。
「よくぞ、そこまで思い切ったことができましたね」と私が尋ねると、「和田さんのコラムを読んで勇気付けられたんですよ」ときた。
「かつて私は、洗車機メーカーの“道場”で師範を務めたこともあるほど、洗車で実績をあげていました。他のカーケアビジネスにも意欲的に取り組み、県内外から大勢見学者も来ました。でも、実際はコストばかりかかり、思ったほど儲かっていませんでした。セルフに関心を抱いていましたが、油外販売をしなければセルフでも生き残れないという一般的な考え方に疑問を抱いていました。
「そんな時に『セルフ雑記帳』を知ったのです。一言で言うと「シンプル・イズ・ベスト」という和田さんの考え方に大いに共感しました。あのコラムと出会わなかったら、中途半端なセルフスタンドにしてしまっていたでしょうし、思い切った事業の見直しにも踏み切れなかったかもしれません。」─。
毎週、無原則・無責任に書いているこのコラムを、そんなに真剣に読んでくださるなんて…。(汗)私はうれしい気持ちを通り越して、今後はあんまりいい加減な気持ちでは書けないなと、思いを引き締められた次第である。
「もう少し早く、和田さんの存在を知っていたなら、このテクナシステムを導入したんですがねぇ…。そうすれば、もっとコストを抑えることが出来たのにと思うと残念です。それに、24時間営業の安全性についても、まだまだ改善が必要だと感じています」─。
あくなき向上心である。しきりに私のことを持ち上げてくださるのだが、私のほうが啓発を受け、勉強させていただいた次第である。遠路はるばるお越しいただき、本当にありがとうございました。
「ところで社長と、奥様と、お嬢さんの3人で店番していらっしゃるということですが、深夜はいつも社長が?」
「いえ、大抵女房が。深夜はただモニターの前に座っているだけですから」
「でも、やっぱり大変じゃないですか?」
「いやいや、以前はコンビニの経営をしていたこともありましたから、それに比べれば全然楽ですよ。女房はいまでも時々、“こんなに楽な商売していいのかしら”って言ってますよ。リクライニングチェアに座って、お気に入りの韓流ドラマを見ながら、機嫌よく店番してくれています」─。(爆)
怠け者と嘲りたければ嘲るが良い。ローコストセルフの真髄が、そんじょそこらの油屋にわかってたまるものか。新たな同志を得て、私はますます勇気付けられたのであった。
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