セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.179 『三種の神器』

GS業界・セルフシステム

2007-10-22

 この間、業界誌を読んでいたら、セルフスタンド間の競争に打ち勝つ“三種の神器”なるものがあるとの記事が目に留まった。それは一体何かと思ったら、一つは「カラー液晶操作盤」、もう一つは「計量機内蔵型釣り銭機」、あと一つは「計量機内蔵型プリカ発券機」なのだそうな。どれも私の店にはない。と言うか、必要ないと思っている。

 まず、「カラー液晶操作盤」。なぜ、液晶パネルが必要なのか。まず、「現金払い」か「クレジット払い」か「プリカ払い」かを選択する。「現金」を選ぶと会員カードの有無を選択する。次に「油種」を選択し、「満タン」を指定するか、「数量」または「金額」を指定して、ハイ、お待ちどうさま、給油を始めてください─。

 特段難しいことではないが、やはり面倒くさい。たかが給油じゃあないですか?プリカか現金を入れて油種選択ボタンを押す─それでいいじゃないか。クレジットカードにこだわらなければ、液晶パネルなんて高価な機能を搭載しなくても済む。その方が機器の操作もシンプルになり、給油客をアテンドすることもほとんどない。また、車のキーやボールペンの先っちょで液晶パネルを突っつくようなバカ客による修理負担も避けられる。

 次に、「計量機内蔵型釣り銭機」。各計量機からATMのように釣り銭を払い出すという便利な機能だが、各計量機に釣り札・釣り銭を補充するための費用と労力は馬鹿にならない。それに、いかに頑丈な造りであろうと、屋外に現金をたっぷり詰めた計量機を24時間動かすのは大変なリスクだ。ATMを機械ごと引っこ抜いて持ち去ってしまう強盗がいる昨今、従業員一人ではとても店番はさせられない。

 最後の「計量機内蔵型プリカ発券機」。あらかじめ金額が定まっている一般的なプリカとは異なり、客が任意で入金し、その金額を書き込んでプリカとして発券する装置である。入金額が多ければ多いほど単価ランクも優遇される仕掛けとなっている。そのうえ、ポイント加算機能や購買履歴機能も併せ持っており、顧客の再来店促進や、油外商品の販売力アップにも貢献するという“無敵”のプリカなのである。

 しかし、元はと言えば、プリカというものは、釣り銭を払う手間を省くために開発されたテレホンカードが基本である。つまり代金決済の簡略化のためのアイテムなのであって、来店促進や購買記録といった機能を付加させることで、店側も客側も使いこなすのが難しくなってしまいのではないだろうか。「何にでも使えるプリペイドカードは、結局、何にも使えないプリペイドカード」ということになる。それに、計量機に様々な機能を組み込むことによって、メンテナンスやセキュリティのコストは高まる。あるスタンド機器業者は、「フル装備の計量機は、中が各種ユニットでギッチギチの状態。どれか一つでも故障すれば、修理に時間と手間がかかり割高となる」と“証言”している。

 我が国にセルフスタンドが出来てからあと半年足らずで10周年を迎えようとしているが、こうした機器類の開発の進捗を見ても、「セルフ・イコール・シンプル」という考えがほとんど理解されていないように思え、いらだちを感じる。元売は、相変わらず「量」を追求しており、そのために机上で考案したシステムを機器メーカーに開発させ、系列スタンドに導入を強いている。だが、私がいらだつのは、高コストのシステムを唯々諾々と受け入れているセルフスタンド経営者たちである。

 セルフにすれば売れるという時代はもう終わろうとしている。では、もうセルフ化しないほうが良いのか。否。減販時代を迎えた今こそ、コストを抑えたセルフ化への改造を急がねばならない。すでにセルフ化したスタンドも、よりローコストな仕組みへと「再改造」して、これからの厳しい状況に備えるべきである。元売の都合や体面などを気遣っていてはダメ。スタンド経営者自身も見栄を捨て、シンプルさを追求してゆくべきである。セルフスタンドの戦いは「神器なき」戦いなのだ。

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