セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.181『閑古鳥が飛んできた!』

GS業界・セルフシステム

2007-11-05

 盆と正月が一緒に来た─先月31日のガソリンスタンドは、おおむねそんな状態だったようだ。何せ、その翌日からはガソリンが150円台にまで値上がりするとの報道がなされたのだから、少しでも安いうちに買っておこうという“駆け込み給油現象”が生じても無理はない。

 特に夕方の繁忙時の給油量が、通常の3~4倍にまで跳ね上がったスタンドも少なくなかったようだ。新聞報道によれば、ジャパンエナジーの系列スタンドでは、カード支払いが集中してシステムの処理能力を超えたため、当日の午後5時から7時半ごろまで、全国の約3分の2に当たる約 2,500のスタンドで代金決済ができなくなった。また、エクソン・モービル系列のスタンドでも、同様の現象が起き、スピードパス並びにクレジットカードの認証(オーソリ)が、通常より時間がかかるなどの障害が約2時間に渡って発生した。EMは、これまで一昨年12月と昨年7月にも同様のトラブルを起こしており、その度に「再発防止徹底のお約束」をしてきたが、今回またまたやっちゃったという訳だ。大丈夫か、EM?

 「ガソリンスタンドは行きたくて行く場所ではない。仕方なく行く場所」というのが我輩の持論である。そんな場所へ、明日からまたまた大幅値上げということで31日に来店した客の大多数は、イライラ、カリカリ、ムカムカしていたはずだ。そこへ追い討ちをかけるがごときシステム障害。「バカヤロウ!いつまで待たせるんだぁぁぁ!」─全国のJOMOやEMの系列スタンドでは、客の“怒りの火炎放射”を受けて火傷を負ったSSスタッフが、大勢いたに違いない。ご愁傷様デス。

 とにかく、値上げの直前や直後には、客と顔を合わせないほうが良い。うっかり「こんにちは」なんて声をかけたばっかりに、「なんでこんなにガソリンが高くなったんだ!」と叱られるのがオチだ。“さわらぬ神にたたりなし”である。そういう客のほとんどは、納得のゆく説明をしてほしくて尋ねているのではない。とにかく、憤まんをぶつけないと気がすまないのである。我がセルフスタンド日進東では、スタッフはひたすら監視室に引きこもり、久々に賑わいを見せている店内を眺めていた。“君子危うきに近寄らず”である。

 さて、明けて1日─ここ日進市においても、ほぼ全店が一斉に5~7円の値上げを実施した。灯油の価格も1缶あたり150円近く上昇。それと同時に、この地域にも閑古鳥の群れが飛来し、巣作りに励んでいる。閑古鳥は、31日の大豊作をせっせとついばんでいる。たまりかねて、採算を無視した安売りを仕掛けると、一時的にこの鳥はいなくなるのだが、今度は“赤字”という害虫が大量発生してしまう。一方、「心のこもった接客」や「オンリーワン・サービス」とやらで、この鳥を追い払うことができると主張する学者(別名:コンサルタント)もいるにはいるが、科学的な裏づけは得られていない。

 東南アジアや中南米諸国の中には、ガソリン価格の高騰で市民が暴動を起こし、時の政権を転覆させかねない一大事にまで発展する国もあるというのに、日本国民は冷静に、忍耐強く、この状況を甘受している。だが、一方で日本の消費者は“倹約”という名の静かな抵抗運動を展開しているのだ。閑古鳥は当分鳴き続けるだろう。一体、こんな状況がいつまで続くのだろうか。トホホ…。

 折りしも、今月1日米国では、有識者たちが集まり、イランの供給削減やナイジェリアの内戦激化などによって原油価格が1バレル160ドルにまで高騰した場合の、安全保障や国内政策のシミュレーションを行なったという。1バレル160ドル!そうなった時のわが国経済は、そしてスタンド業界は、いかなることになるのだろうか。いよいよガソリンは、「ぜいたく品」となり、ガソリンスタンドは「仕方なく行く場所」から「行きたくても行けない場所」にさえなってしまうかもしれない。

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