セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.182『八つ当たり』

GS業界・セルフシステム

2007-11-12

 先日、私の店に来店した中年女性の客がスタッフのYを呼び出し、たいそうな剣幕でこんな文句を言ってきた。

 「わたしはこの間一万円のプリカを買って給油をした時、間違いなく7千円ぐらいの残高があったのに、きょう給油したら、4リットルぐらいしか給油できなかったわ。どうなってるの!」─。

 Yがその場で精算機のプリカ回収箱からそのプリカを取り出し調べてみると、確かに7千円あたりにパンチ穴が開いているが、そのあと二つもパンチ穴が開いている。つまり、そのプリカはその婦人が購入し、給油したあと、さらに2回給油したことを示していた。

 「お客さん、この通りプリカに四つも穴が開いていますよ。つまりきょうを含めて4回も給油している証拠です。ご記憶ありませんか?」

 「いいえ、わたしはきょうが2回目よ。その前は確かに7千幾ら残っていたわ!」

 「じゃあ、その際灯油をお買いになったりとかは…」

 「ないわよ!とにかくこんなの詐欺じゃないの!どうにかしてちょうだいよ!」

 「どうにかとおっしゃられても、このように穴が開いている以上、間違いなく残金が使われているわけでして…」と、言ったところでYが客の車の助手席を見ると、夫とおぼしき男性があさっての方角を見つめたまま座っている。普通なら、カンカンになっている妻を宥めるなり、加勢するなりしそうなものだが、じっと助手席で固まっている。

 (はは~ん、もしかしたらダンナさんが内緒で使ったのかな…)と思いつつ、Yは、ご家族のどなたかが使ったのではないですかと問い質した。しかし、これまでも幾度となく経験してきたことなのだが、人間というもの(特に客という立場に立った人間)は、一度激昂すると引っ込みがつかなくなり、ますますエスカレートする習性がある。

 「大体ガソリンが高すぎるのよ!こんなにどんどん上がってっちゃったら、わたしたち自動車に乗れなくなっちゃうじゃない。どうしてくれるのよ!」

 「お客さん、それはわたしに言われても困ります。そういう文句は石油会社の方にお願いします。あるいは、アメリカ政府か、サウジアラビア政府にでも。では失礼します」

 Yはきびすを返して、奥へ引っ込んでいった。念のため申し上げておくが、この女性客が言うように、前回7千円あった残金が、次回に千円未満に減ってしまうというようなことは、機械的には絶対に生じ得ないことであり、当店には何の落ち度もない。意図的であれ、勘違いであれ、こうしたクレームには毅然とした態度で立ち向かうべきである。

 それにしても、史上最高値のガソリン価格に対する客の憤りは想像に難くない。そのイライラが、何かの拍子に噴出しスタンド店員にぶつけられるというわけだ。フルサービスのスタンド店員は大変だろうな。「なんで、オレが叱られなきゃいけねぇんだ」とストレスを溜めているスタッフは相当いるはずだ。セルフスタンドであっても、スタッフが下手に客に近づこうものなら、客の小言や文句をたっぷり聞かされる破目になる。石油連盟は、日々客の八つ当たりと対峙し、頭を下げているスタンド従業員に、何かねぎらいの言葉をかけてあげるべきではないか。

 私が心配するのは、そのうち、『ガソリンが高いのでむしゃくしゃしてやった』とかいう動機で、スタッフに傷害を負わせたり、計量機や精算機を破壊したりする輩が現われるのではないかということだ。マネーゲームで石油価格をつり上げ、その利益によって何百億もの美術品を買いあさる富豪たちがいるというニュースを見聞きする昨今、一般庶民の不快指数はますます上昇するばかりだ。当分は、客との接触はこれまでになく慎重かつ用心深くあるべきだと思う。

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