セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.184『三ツ星』

GS業界・セルフシステム

2007-11-26

 世界最大のタイヤメーカー・ミシュランは、レストランの格付け本「ミシュランガイド」を発刊していることでも知られている。フランスをはじめ世界21カ国のレストランを対象にした覆面調査により、毎年各国のレストランを評価・格付けするもので、業界内で大きな影響力を及ぼしている。ミシュランに格付けを下げられ、自殺した経営者もいるほどである。そして、このほど22番目のガイドブックとして「東京版」が刊行された。掲載された店は全部で150店で、そのうち最高ランクの「三ツ星」に選ばれたのは8店だった。

 ガソリンスタンド業界でも、これと似たようなことが以前から行なわれてきた。専ら、元売が系列店を対象に行なうものだが、店内クリンリネスと接客サービスの二つのカテゴリーで審査される。店を清潔に保ち、心地良い接客でもてなす─これは店舗商売の基本だ。しかし、元売はそれに加えて、「キャンペーンの飾り付けがしてあるか」とか、「クレジット会員を勧めたか」など、余計なことも審査項目に加えるからややこしくなる。

 あるスタンドは、そうした元売の喜ぶことを一切しなかったため、最下位ランクの格付けをされてしまった。だが、その店は系列支店管内でダントツの量販店であった。その会社の社長は、「元売から“最低”と評価されているウチのスタンドで、一番ガソリンが売れるのは何でだろうねぇ」とニヤニヤしていたが、レストランと異なり、商品そのものに違いがないガソリンスタンドに対する客の評価規準は、やはり価格が高いか安かなのである。

 しかし、セルフ時代になっても、まだ価格以外のサムシングで増販ができると考えているコンサルタントたちは、相変わらず、笑顔を絶やすな、元気な声を出せ、目標を持てなどと講義で訴えている。本当にそれでガソリンが売れるのだろうか。だったらなぜ、フルサービスのスタンドが隣のセルフスタンドと同じ価格の看板を出さざるを得ないのか、仕入れ価格が上昇する中で元売販社のセルフスタンドが率先して価格を引き下げているのはなぜなのか、説明してもらいたいと思う。

 「店構え」を重視する人々もいる。とりわけセルフスタンドは、最低でも500坪の広さが要るとか、アイランドは5基以上なければならないとか、カーケア設備が必要だとか、クレジットカードが使えなければならない等々、それなりの機能が必要だというのである。このたび、東京版「ミシュランガイド」で栄えある三ツ星店に選ばれたお店の一つ「すきやばし次郎」という鮨屋は、世界の三つ星店では例のない地下の店で、メニューもなくカードも使えず、トイレも他店と共同という、異例尽くしの三ツ星店なのだそうである。少々不便でもおいしい鮨を出せばそれで良し、という82歳の店主の一徹なポリシーが感じられる。

 セルフスタンドも、少々出入りが不便だろうと、店内が狭かろうと、クレジットが利かなかろうと、常にお得感を訴求してゆけば、客はやってくる。いやむしろ、店構えが小さいからこそ、機能がシンプルだからこそ、コストパフォーマンスにおいて優れ、お得感を維持し、長く客から支持されるのだ。ガソリンが150円を越え160円になろうかという時代となり、恒常的な減販傾向に突入している中、もはやヒト・モノ・カネをかけ過ぎた大型セルフは、少々安く油を仕入れたところで、利益を出せなくなってゆくだろう。業界人による格付けは「三ツ星」級でも、肝心の経営状態が黒星続きでは、早晩潰れてしまう。セルフスタンドへの改造・再改造を考えておられる経営者には、今度こそ、華美装飾を捨て、ガソリンスタンドの原点に立ち返り、真の「三ツ星スタンド」を目指してもらいたい。

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