セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.187『釣り銭のご用意を』

政治・経済

2007-12-17

 いまから三年前の年の瀬に、銀行の窓口で順番を待っている時に目撃した出来事。一人の中年男性が、銀行員に大そうな剣幕で文句を言っている。そのやり取りを聞いていると、どうやら両替をしようとしたのだが、必要な数量の硬貨か紙幣が不足していてできないということらしい。「去年までのようにタダで両替してもらってたんだったら文句言えんが、今年からは年間手数料取ってるんだろ?それなのにできないってどういうことなんだ?手数料返せよ!」─。なるほど、確かに一理ある。年末という特殊な状況ゆえ、仕方のないことではあるが、料金を取る以上はきちんと“商品”を提供する義務があるのも確かだ。

 この年(2004年)から、千円・五千円・一万円札が現在のデザインの紙幣となり、それを機に、ほとんどすべての銀行がそれまで無料で行なっていた両替を有料化したのである。例えば、三菱東京UFJ銀行の場合、窓口での両替は、円貨枚数が51枚から有料となり、、一万円札10枚を千円札100枚に両替してもらうと、315円の手数料を取られる。紙幣・硬貨に関わりなく、両替する枚数で計算されるので、もし百円硬貨を一円硬貨100枚に両替してもらうとすれば、そのために315円支払わなければならないということになる。だれもやらないだろうけれど…。

 セルフスタンドでも、とりわけ各アイランドごとに釣り銭機を置いているところは、この“釣り銭コスト”とも言うべきものだけでも、結構な負担となるのではなかろうか。量販店になればなるほど、準備しなければならない釣り銭の額(と言うよりも量)も尋常ではない。私は、あるセルフスタンドにお邪魔して、その店の釣り銭のための硬貨が入ったケースを持ち上げようとしたが、重たくてとても一人では持ち上げることができなかった。

 また、あるスタンド・チェーンのエリア・マネージャーのおもなお仕事は、釣り銭の補充のために店を巡回することなのだそうだ。特に毎週金曜日には、彼の車はさながら現金輸送車のようになるという。「怪しい車が付けて来ていないかバックミラーで確認したりして、ちょっと緊張するね」─。くれぐれもご用心を。

 セルフシステムをローコストのものにする鍵となるのは、この釣り銭問題をどうするかにかかっていると言っても良い。現金客に対してどのような仕組みで代金決済を行なうか─これが、そのシステムのメンテナンスやセキュリティにかかるコスト(あるいはリスク)の度合いを決めるのである。客への利便性を過度に重視して、フルスペックの精算機を導入すると、あとあと大変な手間がかかるということを理解しているスタンド経営者は、意外に少ない。

 ところで、今年の銀行の最終営業日は28日(金)である。そのあと1月3日(木)まで、実に6日間も銀行はお休みなのだ。ATMが稼動しているとはいえ、窓口業務が6日間も休みとなると、年中無休のガソリンスタンドは、相当額の釣り銭を準備しておかなければならない。25日を過ぎたころにあわてて両替に行っても、冒頭の話のような“品切れ”状態に遭遇するかもしれない。何せ、普段は銀行で両替なんかしない爺さん婆さんが、お年玉用のピン札を求めてやって来るから、たまったものではない。そうでなくとも、年末の銀行の混みようといったら!

 ゆえに、大抵の店は、売上金の一部を今週あたりから、こつこつと両替してため込んでいるわけだが、6日分の釣り銭ともなると結構な金額となり、月末の資金繰りに微妙に影響したりもする。ホント迷惑な話だ。あんたたちもサービス業だろ?人様が休みの時に営業するのがサービス業なのでは?と銀行に文句の一つも言いたくなる。

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