セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.192『コラボレーション失敗例』

GS業界・セルフシステム

2008-01-28

 2005年の9月に、名古屋市内の自動車整備工場が、隣接する70坪ほどの小さなガソリンスタンドをマルチ計量機1基のみのセルフスタンドに改造し、オープンさせた。“ガソリン自販機”というコンセプトで、本業の整備工場との相乗効果が期待されたのだが、昨年9月にあえなく閉鎖されてしまった。いまは、整備工場の駐車場となっている。

 販売量が当初の目論見どおりに伸びなかったことが原因のようだが、私が手がけたセルフスタンドでは初の閉鎖となった。実は昨年の夏ごろ、このスタンドのマネージャーが交代した際、新任のマネージャーから、「本社から、売上を上げるための改善策を講じるようにとの指示を受けているので、アドバイスしてほしい」と持ちかけられた。そこで私は、かねてから考えていた幾つかの改善策を提案した。

 まず、閉店時間の延長を勧めた。そのスタンドは、深夜でも自動車の交通量が多い幹線道路に面していたにもかかわらず、整備工場の閉店時間に付き合わされて、午後7時に閉めていたのである。何というもったいないことか。私は、早くても午後11時閉店、可能であれば24時間営業をしなさいと勧めた。おりしも、整備工場の駐車場で車上荒らしの被害が続いていたため、警備員を常駐させようか検討しているとのことだったので、その警備員に夜間のスタンド監視もさせれば一石二鳥になると提案した。

 次に、そのスタンドでは、乗り入れ口付近に、「0円」の中古車を展示したり、整備工場のレッカー車などを駐車したりしていたので、スタンドへのスムーズな進入を妨げたり、価格看板を見えにくくさせるものを、一時的であっても置かないようにしてくださいと進言した。

 三つ目に、それまで板金修理の取次ぎショップ内に置かれていたプリカ券売機を、別棟のお客様用待合室へ移すよう勧めた。ローコスト・セルフの要諦の一つは、客とスタッフが極力接触しないことだ。ところが、このスタンドではそれまで、プリカを買おうとしてセールスルームに入ると、カウンターにいる2~3人のスタッフと顔を合わせることになり、しかも、そのスタッフが皆お世辞にも愛想が良いとは言えないオッサンばかりだった。これでは、客もプリカが買いづらい。

 そのほかにも、業転仕入ルートの新規開拓など幾つかの提案をしたところ、新任のマネージャーはそれを本社の担当役員に報告した。本社からは、早速実行に移すようにとの指示があり、マネージャーは私に、具体的な準備に入るので手伝ってほしいと連絡してきた。それに伴い、プリカの追加発注もいただき、仕切り直しての再スタートに向けて私も意気込んでいたのだが、ほどなくして、急転直下、突然閉店の指示が本社から来たのだった。

 方針が一転した詳しい理由は聞けずじまいだったのだが、どうやら、あくまでも整備工場が本業であり、スタンドは添え物に過ぎないと考えている本社役員がいて、スタンドが整備工場の営業や労務に障りとなるのを嫌ったためとのことであった。私としては、上記に挙げた提案を実行に移せば、早晩、改善効果が出ると考えていただけに、何とかやらせてもらいたかったのだが、あきらめざるを得なかった。

 整備工場がガソリンスタンドをローコストで運営し、そこでの集客を本業の顧客開拓に結びつけるという意欲的なコラボレーションの試みは、こうして、スタンド経営に対する無理解と、中途半端な営業形態によって、わずか2年で幕を閉じることとなった。とはいえ、「失敗は成功の母」とも言う。今回の教訓を生かして、次なる機会には、異業種とセルフスタンドとの理想的なカップルを誕生させたいと思っている。

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