セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.193『みなし管理職』

社会・国際

2008-02-04

 日本マクドナルドの熊谷市の直営店々長が「権限のない店長を管理職扱いし、残業代を支払わないのは不当」として、二年分の未払い残業代の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は先月28日、残業代など計約755万円を支払うよう同社に命じた。残業が月100時間を超え、2ヶ月間も休みがなかったこともあるというこの店長の現状を精査した裁判所は、「職務や権限は店舗内の事項に限られ、経営者と一体的といえる重要なものではない。労働時間の裁量もない」として、管理職には当たらないと判断した。

 似たような訴訟として、紳士服大手のコナカの元店長が「出退勤の自由などがなく、管理監督者とはいえない」と主張し、一昨年の10月に横浜地裁に労働審判を申し立てていた。こちらは、コナカ側が未払い解決金600万円を支払うことで先月22日に和解となった。

 いずれの場合も、管理職とは名ばかりで、所詮は残業代なしでこき使うだけの“みなし管理職”ではないかとの問題提起がなされたわけだが、私はこの一連のニュースを見聞きして、“何を今さら”との感想を抱いた。我がガソリンスタンド業界では、こんなことは恒常的な出来事だからだ。件のマクドナルドの店長は、午前6時に出勤し、午後11時の閉店まで働いたという。さらに、成果主義が導入され、人件費削減のため自らシフトに入った。その一方で、会社からは営業時間の延長が指示されたり、作成した売り上げ計画が認められないなど、権限は限定的だったという。しかし、全国の多くのガソリンスタンドの店長たちがこの訴状を目にすれば、「えっ!?それって訴えてもいいようなことなの?」と感じるのではないだろうか。

 ある外資系元売の100㌫子会社の運営する24時間店では、店長が、もう一人の正社員(主任)と共に朝の6時から昼過ぎまで働き、スタッフルームのソファで3時間ほど仮眠を取ったあと、深夜スタッフと交替する夜の10時まで勤務するという状態が40日ほど休みなく続いていたのだが、深夜スタッフのじいさんが急死したため、さらに翌朝6時までぶっ続けで勤務することになり、家に帰るのもままならない破目になった。

 本社に補充を要請しても、なかなか人が集まらないとのこと。近隣の複数店舗を統括するエリアマネージャーに応援を依頼すると、「オレは忙しくて助けてやれない。自分の店は自分で何とかしろ」と叱られてしまった。「このままでは過労死する」と思った彼は、主任と共謀して一芝居打つことにした。主任が本社に、「大変です、店長が過労で倒れてしまいました。救急車を呼んでもいいですか」と電話をしたのだ。本社の返事は「救急車はまずい。君が近くの医者まで連れてゆけ」とのこと。主任は「でも、店には僕と店長しかいないんです。どうすればいいですか?」と訴えた。すると本社は「すぐにだれかを行かせるから」という返答。しばらくして駆けつけた「だれか」とは、忙しくて助けてやれないと言っていたエリアマネージャーだった。あとで聞いた話では、本社から連絡を受けた時、彼は自宅で昼寝をしていたのだという。その後ほどなくして、“なかなか集まらなかった”人員も補充されたという。

 「あのまま我慢して働いていたら、僕が本当に倒れるまで会社は助けてくれなかったでしょうね。もちろん残業代なんてありゃしない。仮に払ってもらったとしても、体がぼろぼろになるか、家庭ががたがたになるか、その両方かといったところです。とても割に合うもんじゃありませんよ」─。

 法令順守を標榜する元売も、その子会社においては、まるで“女工哀史”のような過酷な労働を強いているのが実態のようである。セルフ化は、こうした労働環境を改善させる有効な手段となるはずだったのだが、いわゆる「日本型セルフ」なるものを推進した結果、スタンド店長は、ますます過酷な状況に置かれているとの報告も耳にする。この点は、次回論じたいと思う。

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