セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.199『貪欲』

オピニオン

2008-03-17

 もうすっかり私たちの耳に馴染んだ「サブプライムローン問題」という言葉。米国の低所得の人たちに貸し付けられた変動金利ローンが、住宅バブルの崩壊と共に、莫大な焦げ付きとなって人々を苦しめている。住宅資産の上昇分を担保としてサブプライムローンに借り換え、余剰分を現金化して分不相応の生活をしてきた人々が、いま自宅を差し押さえられ、返済不能のローンを抱えて途方に暮れている。しかし、事は米国内の問題では収まらない。サブプライムローンを証券化した金融商品が世界中で不良債権化し、昨年末時点で、日米欧の金融機関の損失は14兆円にも上ると言われている。

 この問題は、ガソリンスタンド業界にも少なからぬ影響を及ぼすだろう。新規出店やセルフ改造などの資金の貸付に、銀行はより一層慎重になるだろうし、リース会社の審査もずっと厳しくなることが予想される。信販会社がクレジット手数料を引き上げる局面も生じるかもしれない。

 サブプライムローン問題による米国経済への不安は、ドル安を誘発する。今週明けの東京外為市場での円相場は一時1ドル95円台にまで上昇した。円高は輸入原材料価格の低下をもたらすので、石油業界としては歓迎できる状況かと思いきや、世の中はそんなに単純ではない。冷凍ギョウザを買い控えるのと同じく、サブプライムという毒が混入しているかもしれない金融商品への投資を嫌った投機マネーが、原油や金、大豆や小麦といった商品相場に流れ込んだ結果、例えば原油価格は、心理的な壁だった1ドル100円をあっさり突破し、110円をも超えて、まだまだ上昇中である。結局、円高効果は相殺された格好で、ガソリン価格は高値が続いている。我々の業界に及ぼしている影響はここで論じるまでもなく、みなさんが日々実感(痛感?)しておられるとおりである。

 以上、頭の悪い私が、テレビや新聞を見聞きして得た知識を書き記してみたのだが、「そんなことはわかっとるわい」というのがご感想であろう。私自身も、一介のガソリンスタンド経営者が、世界経済の大きなうねりをあれこれ論じたところで、何ともならないと理解している。所詮、なるようにしかならない。しかし、それを承知であえて述べたいのは、これらの問題の根源がどこにあるのかということだ。私はそれが「貪欲」であると考える。

 「貪欲」とは、国語辞典によれば、「非常に欲が深いこと。むさぼって飽くことを知らないこと」という意味だが、年齢や貧富や民族の違いに関係なく、人類の多くは貪欲という性向に支配されて、今日の混乱を招いたと思う。「狭いながらも楽しい我が家」などといった考えは押しやられ、“あれも欲しい、これも買いたい”という欲望に駆られて返せる当てもない借金を重ねてきた人々。そうした人々の欲望につけ込み、言葉巧みに高金利のローンを貸し付け、手数料で荒稼ぎした人々。それらを金融商品として売りまくり大もうけした銀行。その金融商品が危なくなると、次なる利ざやを求めて何でも買いあさる投機ファンド─。

 すべてが、度を越した貪欲の連鎖である。そのうえに利己主義がさらなる拍車をかけている。自分さえ良ければよい。そのために他の人々がどうなろうと知ったことではない。人間だれしも、自分のことが一番大切なのは当たり前のことだが、自分の欲求を満たすためであれば、他の人々が飢えたり、家を失ったりしてもかまわないという考えを抱く人々が、世界の経済の主要な立場を占めているとすれば、もはや絶望的である。我々の業界の前途も明るくなることは期待できないだろう。今回は、柄にもなくそんな深刻な問題について真面目に考え、一人憂鬱な気分に浸ったのであった。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ