セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.201『その時、歴史は動いた?』

GS業界・セルフシステム

2008-03-31

 「まさかそんなことありっこない…あれ、ひょっとしたらひょっとするかも…いやいや、いくらなんでもそれはないだろう…おいおい本当に来ちゃったよ、どうしよう!」─。ガソリンの暫定税率を巡る与野党の攻防を見守りながら3月を過ごしたガソリンスタンド経営者の心境は、おおむねこんな感じではなかったろうか。このコラムは3月31日に書いているので、厳密に言えば、暫定税率の廃止が完全に決定したことを前提に書いているのではない。最後の瞬間に与野党間で話し合いがつき、4月4日の油業報知新聞に掲載されるころには暫定税率がそのまま維持されているかもしれない。その場合は、フィクションとして読んでいただければ結構である。

 3月に入ってからも、ガソリンが25円下がることはないだろうというのが業界の大方の予想だったと思う。暫定税率廃止は“絶対に”ないと断言する人が何人もいた。しかし、19日に日銀総裁が決められなかった辺りから雲行きが怪しくなってきた。25日を過ぎたころから、マスコミもカウントダウンを始め、「そしてみなさん、とうとうその時を迎えたのであります!」(NHK松平アナウンサー)。

 テレビニュースを見ていたら、名古屋市内のあるスタンド店長が、カメラの前で148円の価格看板を「暫定税率が廃止されたら…」と言いながら123円のパネルに差し替え、「こうなりますね~。久しく見ない価格でした~」と笑顔で解説していた。それを見ながら私は、「やれやれ能天気な事やってるな~。ところで、あなたの店が所属する元売り会社は、来月から5円値上げをアナウンスしているんだけどご存知ですか?あなたが実演した通りのことをやると、30円の値下げになっちゃうんだよ?」とつぶやいていた。

 ところで、いつから25円分の値下げをするかということが、業界内で問題となっている。タンクの中には、3月中に購入したガソリンが幾らかあるわけで、それを売り切るまで値下げはしたくないのだが、実際は、大半のスタンドが1日から下げざるを得ない状況だ。恐らく元売りから損失分の補填を担保されているのであろう各地の大手スタンドチェーンが、こぞって1日からの値下げを公言しているからだ。いくらなんでも、隣の店より25円も高いガソリンを売るわけにはいかんだろう。

 「(前月分の油を)25円も下げて売ったら潰れてしまう!」とのコメントも、テレビで報じられているが、本当にそうだろうか? 何だかんだと騒いでいるが、要は1リットル25円の“販促費”を費やしてキャンペーンをしているということである。クリネックス・ティッシュボックス5箱が近所のドラッグストアの特売で約250円。つまり、“暫定税値引き”を実施すると、10リットルにつきティッシュボックス5個を景品でプレゼントするのと同じことになる。

 「なぁ~んだ、それなら大したことないじゃないか。その程度のイベントなら、いままで何度もやってきたからなぁ~」と感じてもらえれば幸い(?)である。しかも、私は断言するが、ティッシュ5個を付けて売るより、ストレートに25円下げて売る方が、“絶対に”ガソリンは売れる。今回の値下げは、ガソリンを売る最も効果的な方法が、ただ安く売ることだという事を改めて思い知る機会となるだろう。問題は、各々の店が、それを実行し得るコスト体質となっているかどうかである。フルサービスのスタンドは明らかに不利だと思う。しかし、もっとしんどいのは、大きなタンク、たくさんの計量機、大勢のスタッフを抱える、タイタニックのような大型セルフスタンドではあるまいか。果たして、今回の騒動は業界にどのような現象を生じさせるのか。そしてそこから何を学ぶのか。その時、歴史は動くのか?!

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