セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.204『変化せよ』

GS業界・セルフシステム

2008-04-21

 NHKの大河ドラマ『篤姫』の20日の放映を観ていたら、こんなシーンに出くわした。西郷吉之助(小澤征悦)から、少々西洋諸国に肩入れし過ぎではないかと諌められた島津斉彬(高橋英樹)が、西郷に問う。

 「ここに、病人が居るとする。二つの薬があり、一つは病気を治すことができ、もう一つは効かぬとする。そちはどちらを病人に飲ませる」

 「無論、効く方の薬でございます」

 「それが西洋の薬でもか!」

 「…は、はぁ」

 「病人はいまの日本じゃ。自分より優れた国があることを認めようともせず、殻に閉じこもって太平の世がいつまでも続くことを願っておるのじゃ!」

 ほんの数十秒だが、なかなか見ごたえのあるシーンだった。長い年月、安穏と過ごしていると、変化することがおっくうになる、いや、怖くなる。できることならこれまでどおりの世の中であって欲しいとの願望が、現実を見誤らせる。恐れてはいけない。偏見や先入観にとらわれず、勇気を持って変化しなければならない─。

 これは、ガソリンスタンド業界にも当てはまる箴言である。これまでのやり方にいつまでもこだわっていると、変化に対応できずに衰退し、最悪の場合滅んでしまうかもしれない。『また始まった。だからセルフにしろと言うんだろ』と思われるかもしれないが、もはやセルフにするしないを論じる段階ではない。どんなセルフを目指すかを論じる時代だと私は考える。

 ガソリン税の暫定分値下げで4月の最初の数日は売れたものの、その後は大して売れない、いや、むしろ前年より売れないというスタンドも結構あると聞く。それもそのはず、25円も下げたとはいえ、ガソリン価格はやっと去年並みになった程度だ。それどころか、4月には人間が生きてゆくうえで不可欠な食料品が、軒並み値上がりした。日本の多くの家庭では、ガソリンを普段より余計に消費するような余裕はないのである。

 今月初め、原油価格は1バレル101ドル(NY)まで下がり、いよいよ“原油バブル”崩壊かとの見方まで出たが、この数日間で急騰、18日には一時、史上最高値の117ドル台をつけた。一方、石油依存からの脱却をはかり、なおかつ、温暖化対策になるとして取り組んだバイオ燃料が、人類に新たな危機を招いている。人類は初めて、自分たちの胃袋と、自動車のタンクとが、同じ土地をめぐって争う時代を迎えたのだ。日本人には無縁に思えた「飢餓」という言葉が、次第に現実味を帯びてきている。

 何という恐ろしい時代になったのだろう。もうガソリンはたくさん売れない、いや、売ってはいけない時代に私たちは突入したのではないだろうか。それなのに、相変わらず、過去の成功体験に固執して、ガソリンをたくさん売るために、大型店舗を建設し、安売りをし続ける人たちに、私は『それでいいのですか?』と問いたい心持ちである。

 あえて逆説的なことを書けば、この際政府が、10年前に戻ってセルフ給油を禁止してしまったらどうだろうか。そうなれば、いまある巨艦セルフスタンドは、大勢のスタッフを配置しなければならず、人件費がかさんでたちまち潰れてしまうのではないか。安売り店も、少しは採算性を考えた価格設定をしなければなるまい。そうなってはじめて、セルフとはガソリンをたくさん売る道具ではなく、コストを抑えて利益を生み出す手段なのだということが理解できるかもしれない。それぐらい苦い薬でも飲まない限り、この業界に巣食っている疫病は治らないかもしれない。

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