セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.207『タンデム』

オピニオン

2008-05-12

 3月のロシア大統領選挙で当選したメドベージェフ副首相が、今月7日に第3代大統領に就任した。新大統領は、同日、2期8年の任期満了で退任したプーチン前大統領を首相に指名、下院において承認された。「タンデム(二人乗り自転車)」と呼ばれる二頭指導体制がスタートしたわけだが、下院の7割を占める与党「統一ロシア」の党首も兼ねるプーチン新首相が、相変わらず最高実力者として君臨し、42歳の新大統領はお飾り的存在に甘んじるのではないか、との見方が強い。

 大国の指導者から中小・零細企業の経営者に至るまで、いつの世にあっても“政権交代”は難しいものである。後継者を指名し、社長の座を譲ったものの、「会長」という肩書きを付けて、毎日会社に現われる前社長は少なくない。新社長にしてみれば、会長は、自分を社長にしてくれた“恩人”なのだが、同時に、自分の経営に制約を生じさせる厄介な存在であったりもする。会長としては、プーチン気取りで、若年で経験不足の新社長をサポートするつもりでいたのだが、いつしか邪魔者扱いされてしまい、だれも相談に行かないけれども「相談役」にされてしまう、というケースは世にあまたある。

 ガソリンスタンドは、元売りや商社の子会社を除けば、そのほとんどが同族経営であり、社長の座は世襲制である。つまり“会長と社長”は“親と子”というわけだ。“兄と弟”とか“叔父と甥”などのケースも含め、血縁関係による「タンデム」体制が一般的だ。「血は水よりも濃い」の習いどおり、それが緊密で強力な経営体制を築くことになれば良いのだが、骨肉であるがゆえの確執や恩讐が経営に災いをもたらすこともある。ガソリンスタンドのセルフ化を巡る対立もまた、然りである。

 社長(息子)がセルフ化を進めようとするが、保守的な会長(父)がこれに立ちはだかる、というのがよくある図式なのだが、そもそも邪魔立てするぐらいなら、何で息子を社長にしたんだよ!と言いたくなる。息子や娘婿を社長に据えておけば、自分の意に逆らったことなどしないだろうと考えていたのかもしれない。ところが、若い社長が、セルフ化を機に、これまでのサービス体制を改め、子飼いのベテラン社員を退け、元売りとの関係すら見直す─つまり、かつて自分が築いてきたものを否定されているような気持ちになり、これを阻止しようとするというわけだ。

 しかし、私はこうした状況に立ち会うたびに、息子である社長の方が、もっと意を尽くして説明し、礼を尽くして説得していれば、対立は避け得たであろうと感じる。セルフ化によって効率的な経営を目ざし、厳しい経営環境を乗り切ろうとする理念は正しい。だが、それを「社長はオレだ、オレが決める!」という調子でやったのでは、会長はおろか、部下からも理解を得るのは難しい。また、その逆に、「これこれこういう理由でセルフにしたいのだが力を貸してくれないか」とはっきり告げることもできず、オヤジのいないところで(例えば私の前などで)、グチをこぼしているような社長も情けない。いつぞやなど、あんまりオヤジの悪口を愚痴るので、「そんなにオヤジが嫌いなら、オヤジを会社から追放するか、アンタが会社を辞めればいいじゃないか」と言ってやったら、黙ってしまった。そんな程度の覚悟なら、セルフ化なんぞしないほうがいいぜ、社長。

 というわけで、心を一つにしてタンデムをこぐのは、なかなか骨の折れることなのだ。セルフスタンド経営も、親子の意思の疎通が不可欠である。とはいえ、ローコスト経営の論理から言えば、そもそも経営者が二人いること自体が問題なのだ。自転車は一人でこいだ方が、断然早いに決まっている…。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ