セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.208『自殺行為』

社会・国際

2008-05-19

 内閣府が16日に発表した「自殺対策に関する意識調査」によると、成人男女の19.1%が本気で自殺を考えた経験があることが明らかになった。とりわけ、20代で24.6%、30代で27.8%と高い比率であることもわかった。若い人たちが、生きるのをやめたくなるような国─何ともやりきれない話である。

 はなし変わって今月のガソリンスタンド業界。前月の反動からまだ回復できずにいるスタンドが多いようで、前年同月比で相当減販する見通しだ。売れなくなると、不安になる。不安になると、この業界がすることはただ一つ、売り値を下げるしかない。日進市も例外ではない。

 今月18日現在、日進市のセルフスタンドのレギュラーガソリン価格は、軒並み148円である。全国平均値が160円を越えたとNHKが報じる中、連休明けからズルズル下がってこの価格である。そこから消費税約7円を引けば…ほぼ原価に近い。

 来月には、さらなる仕入れ価格の値上がりが予想される中での値下げ競争は“自殺行為”と評されている。セルフスタンドが全国最多の愛知県で、その1割強が密集しているという日進市周辺では、1軒が下げればたちまち向こう三軒両どなりがこれに追従する。さしずめ、集合住宅の一軒で硫化水素自殺をしでかすと、住民全体に被害が及ぶようなものだ。

 硫化水素ガスは、空気よりも重いので、例えば5階建てのマンションの3階の一室で硫化水素ガスが発生した場合は、住民は4階以上、可能なら屋上へ逃れるべきなのだ。ところが、日進市のセルフスタンド銀座では、一軒が“自殺行為”に走ると、すぐに同じ価格か、それよりさらに下の価格(階)までぞろぞろと降りてくる。まさに“集団自殺”となってしまう。

 こんなことを繰り返していると、本当の自殺者が続出するような業界になってしまうのではないかと心配してしまう。いまさら、夢と希望のある業界にしようなどという空しいことを書くつもりは無いが、せめてつましいながらも毎日を心穏やかに暮らせるような業界にできないものかと思うきょうこの頃である。

 自殺をするのは弱い人間なのだという見方は、大きな誤りである。解決不能に思える問題に直面した時、耐え難い苦痛から逃れたいと思うのは、正常な心理状態である。もちろん、その解決策として自殺という選択肢を取るのことは正しいことではない。冒頭の内閣府の調査によれば、自殺を考えたことのある人の11%は、「悩みやつらい気持ちを受け止めてくれる人がいない」と答えている。周囲の支えの有無が、自殺行為を思いとどまらせるか否かの分かれ目となるようだ。

 これを、ガソリンスタンドに当てはめるなら、系列店であれば、やはり元売りが適切な助言や支援をする立場にあると思う。特に、今月のような特殊な事情の場合こそ、減販に動揺する系列店を励まし、冷静な対応を促すべきではないか。ところが、ここ日進市で率先して“自殺価格”を掲出しているのは元売りの子会社セルフだったりする。弱者は死ねと言わんばかりだ。

 社会福祉法人「いのちの電話」によると、自殺した人は、平均16回未遂をはかっているのだそうだ。それは切羽詰った必死のサインであり、それが段々とエスカレートし、最終的には死に至ってしまうのだという。減販による収益の低下や資金繰りの悪化が、現金をかき集めるだけの採算を度外視した安売りへとエスカレートしてゆくなら、その末路はやはり“死”ではないだろうか。

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