セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.209『ツバメの巣作り』

オピニオン

2008-05-26

 今年も「セルフスタンド日進東」にツバメがやってきた。昨年は、屋外スピーカーの上に巣を造ったのだが、今回は販売室の自動ドアの真上を走っている配管の上に造り始めた。販売室は一日に何十人もの客が、プリペイドカードを買うために出入りする。その入り口でこれから数週間子育てをされると、客の頭に泥や糞を落とされる恐れがあるので、可愛そうだが巣が完成する前に取り除いた。

 少し離れた電線の上で、干し藁を一本ずつくわえたつがいのツバメが、その撤去作業を恨めしそうに(?)眺めていた。結局、そのあと彼らはキャノピーを支える柱の最上部のでっぱりに居を構えた。しかし、地上から5メートル以上もある場所なので、ヒナが巣から落っこちたりしても元に戻してやれずちょっと心配ではある。

 ツバメが軒に巣を造る店は繁盛するとの言い伝えがあるが、これはツバメが外敵から家族を守るためにあえて人の出入りが激しい場所を選んで巣を造るのでそう信じられているのだそうだ。そう聞くと、私の店に巣を造るツバメ夫婦に「本当にウチの店でよろしいんですか?」と聞いてみたくなる。暫定税率が復活した5月は、閑古鳥が巣作りして、販売量がメタメタでったのだが、ツバメの飛来で流れが変わってくれないかとも思う。しかし、来月はさらなる大幅値上げとなりそうで、閑古鳥が増殖し、ツバメを追い出してしまうのではないかと不安である。

 愛知県には、ツバメが三度巣をかけると千万長者になるという言い伝えもある。これがまったくの偽りであることは、私自身が立証している。また、火事を出す家にはツバメは巣造りしないとも言われる。これは、ツバメが巣を造れるような整然とした状態を保つようにとの戒めのこめられたものなのだそうだが、危険物を扱う我々にとってはとりわけ注意すべきことであろう。

 ツバメが地面すれすれを飛んだりする日は、その日か翌日には雨が降ると言われていることには、科学的根拠があるようだ。大気中の湿度が高くなると、ツバメの餌である虫が羽に湿り気を帯びて高く飛べなくなるため、それを狙ってツバメが低空飛行するというのである。なるほど。ツバメが低く飛ぶようになったら、WTIの価格が下がるなんていうジンクスはないものかね。

 ツバメは渡り鳥である。いま日本で子作りをしているツバメは、秋ごろにフィリピンやマレー半島、台湾などへ飛び立ってゆく。あの小さな鳥にそれほどのパワーが秘められているとはまったく驚きである。ツバメは、その生涯中一度決めた場所に毎年帰ってくるそうだが、客という名の渡り鳥には、そうした帰巣本能はなく、あっちへ行ったり、こっちへ来たりと絶えず移動している。安いガソリンを求めて、常に低空飛行しているのだ。

 しかし、それは仕方のないことだ。ヒナが生まれたあとのツバメの巣の騒々しい様子を見よ。親鳥は一日に5百回以上餌を運ぶのだそうだ。家族を養ってゆくためには、鳥も人間も必死なのである。食料品が軒並み値上がりする中、食べ盛りの子どものために、ガソリン代はできる限り節約しなければならない。ツバメと違って、人間のヒナには医療費や教育費もかかる。ツバメの糞が付いたぐらいで、洗車なんかに金を使っていられるか!ってなものである。せっせと巣作りに励むツバメを眺めながら、この店の、そしてこの業界の先行きを案じたりして…ああ、オレもヒマジンだなぁ…。

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