セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.211『レーザー・レーサー』

エンタメ・スポーツ

2008-06-09

 競泳のジャパン・オープンが去る6日に開催されたが、北島康介ほか北京五輪代表選手5人が次々と日本新記録をマークするという快挙となった。その秘密は、英スピード社が今年2月に発表した“魔法の水着”レーザー・レーサー(LR)である。日本水泳連盟が北京五輪での着用を認めていないこの水着に身を包んだ選手たちが驚異的な泳ぎを見せたとあって、LRへの評価は決定的となり、北京での着用解禁はほぼ確実な情勢だ。

 それにしても、これほどてきめんに効果を挙げた道具というものを近年見たことがない。使用した選手が皆、日本を代表するスイマーたちだったとはいえ、泳げば新記録という状態を見ると、市営プールで25㍍泳いだだけでフーフー言っている“現役メタボスイマー”の私も身に着けてみたくなったりする。

 それはともかく、世界ではとっくにスタンダードとなっているLRの使用を、なぜ日本水連がためらっているのかといえば、国内の三大水着メーカー(ミズノ、デサント、アシックス)からスポンサー契約という名の巨額の協力金をもらってきたため、いまさら他社メーカー(しかも舶来品)の水着を推奨ことはできないということらしい。また、個々の選手たちも、三大メーカーのいずれかの社員だったり、個人契約を結んでいたりするので、LRの圧倒的な性能を体感しつつも、うしろめたさを拭いきれないでいるとの報道を見聞きした。

 何ということだ。企業の面子やしがらみに縛られて、4年に1度の大舞台でベストパフォーマンスを発揮できないとすれば、100分の1秒に青春のすべてを注いできた選手たちがあまりにも可哀想ではないか。何を着るかは選手個々の判断に任せれば良いのではないかと思う。

 「どんなスタイルで売ろうと、ガソリンを売ればそれでいいのではないか」─販売方法にいちいち注文をつける元売に、こう反論した経験のあるスタンド経営者は少なくないだろう。ひと昔前は、価格看板を出そうものなら自宅まで電話をかけてきて、看板をすぐに降ろせと“指導”されたが、いまでは逆に「地域最安値にしっかりついて行け」とせっつかれるらしい。スタンドのレイアウトにも、求めもしないのに“アドバイス”してくる。理にかなった説明を求めると、「これが当社のスタンダードだからです!」と主張する。とにかく、余計な事を考えずに、こちらの言うとおりにやってくれというわけだ。

 セルフシステムについても同様である。まずは自社クレジットや現金会員カードが使えるシステムであることが元売の絶対条件だ。POSに依存せず、独立して動作するスタンドアローン型のプリカシステムなどを導入しようとすると、猛烈に反対してくる。あるいは、「どうせそんなもので売れやせん」とばかりに無視される。無視されるのは一向に構わないが、そのあとから「これまで出してきたインセンティブは打ち切らせてもらいます」との通告。スタンド経営者としては、長年付き合ってきた元売にはそれなりに愛着もあるので、心は揺れる。自社システムを導入するというのは、理屈で言うほど簡単なものではないのだ。

 とは言うものの、仮需が発生した途端何度もパンクしてしまうクレジットシステムや、コストばかりがかかって経営の足を引っ張る車販システムなど、元売のお仕着せウェアのおかげで、フリースタイルでのパフォーマンスができないとぼやくスタンド経営者は、自分の店にとって最適なスタイルの導入を自己責任のもとで決断しなければならない。

 ジャパン・オープン1日目、水着論争でかまびすしい外野席を意識して、北島康介は日・英・中国語で『泳ぐのは僕だ』と書かれたTシャツを着てプールサイドに現われた。わたしたちスタンド経営者も、『油を売るのは私だ』という意識を持って、ますます厳しさを増す販売競争に臨まねばならない。

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