セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.212『ワタシ作る人』

GS業界・セルフシステム

2008-06-16

 海の向こうから,興味深いニュースが舞い込んできた。[12日ニューヨーク発ロイター]『米エクソンモービルは,保有する全米の約2,200ヶ所のガソリンスタンドを売却し,直営のガソリンスタンド事業から撤退すると発表した。ガソリンスタンドの経営環境が極めて困難なためとしている(下線は筆者)』─。

 エクソンの2007年通年の利益は400億ドルを超えたが,大半の利益は世界中での石油・ガス生産事業からもたらされている。下流部門のガソリンスタンド事業は,むしろ収益性の足を引っ張る存在と判断されたわけだ。

 私が小学生の頃,インスタントラーメンのCMで『ワタシ食べる人,アナタ作る人』というフレーズが流行り,これが女性蔑視の表現だとして物議をかもしたことがあったが,今回のエクソンの決断は,まさに『ワタシ作る人』という立場を鮮明に示したことになる。2,200ヶ所の社有スタンドのうちの850ヶ所はエクソンが直接運営しているそうだが,これらは買い受ける先がなければ閉鎖ということになるのだろうか。

 日本では,セルフが認可されて10年このかた,元売の100㌫子会社による直営思考が顕著となり,大型セルフスタンドの出店が積極的に進められてきた。作った以上はみっともない数字は残せないということで,元売直営店は各地域で安売り量販政策を進めてきたが,傍から見ている限りとても採算がとれているとは思えなかった。

 「あのスタンドは元売直営店だから,量さえ出せば儲からなくてもいいんだよ」というのが,やっかみの入った通説となっていたのだが,世界でもっとも利益をあげている企業が不採算だからやめると宣言したことの意味は大きい。いや,むしろ世界でもっとも儲かっている会社だからこその決断だったともいえる。

 “アメリカがくしゃみをすれば…”の原則どおりであれば,やがて日本でも,エクソンの直営撤退がはじまることだろう。恐らく今回の報道を受けて,他の元売会社の経営陣は「米国と日本では事情が違う」とか「エクソンと我が社では体質が異なる」などと釈明することだろう。しかし所詮は周回遅れのランナーの戯言だと思う。価格決定,製品配送,セルフ戦略など,この10年間エクソンが行なってきたことは,良し悪しはともかく,そのほとんどが業界のスタンダードになりつつある。まさに“エクソンがくしゃみをすれば…”である。

 さて「経営が極めて困難」として元売直営スタンドが撤退したあと,南極のタロとジロのように,ブリザードが吹き荒れる業界に取り残されたスタンド経営者にはどんな運命が待ち受けているのだろうか。元売直営店がなくなり,ようやく採算販売の必要性に目覚め,スタンド経営者の手によるユートピアを建設するのだろうか。それとも,元売直営店網をまとめ買いした新たなカテゴリーキラーの登場によって,ますます熾烈な競争が生じるのだろうか。

 これまでスタンド経営者は何かというと元売販社のせいにできたが,今度こそ,自分たちの責任と行動によって,新たな秩序を生み出してゆかなければならない。そのひとつの手立ては,元売直営店にはできなかったローコスト・セルフシステムを確立することだと思う。直営事業から手を引いた元売に,もはや売り方についてとやかく世話を焼いてもらう必要はない。裏を返せば,今後は元売に助けを求めても『ワタシ作る人,アナタ売る人』と言われてしまうことになるだろう。

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