セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.219『寒い話』

政治・経済

2008-08-04

 世界一の自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)が深刻な経営危機に陥っている。今月1日に発表した2008年4~6月期の決算では、最終損益は前期の33億ドルから155億ドル(約1兆6600億円)へと大幅に拡大、4四半期連続の最終赤字となった。売上高は前年同期比18㌫も減少。ガソリン価格の高騰やサブプライムローン問題などにより、主力の北米市場が深刻な販売不振に陥ったためだ。GMは、人件費の削減や大型車の減産などを一層進めて経営立て直しを急ぐとしているが、株価が54年ぶりの安値を付けるまでに急落しており、資金繰りへの懸念も指摘される事態になっているという。

 一方、エクソンモービルはその前日に同じく4~6月期決算を発表。それによると、純利益は原油高の恩恵を受け、前年同期比14㌫増の116億8000万ドル(約1兆2500億円)に上り、四半期ベースでの米企業の過去最高益を更新した。しかし、同社によればこの間の生産量はベネズエラで油田開発権益を失ったことや、ナイジェリアでのストライキなどで8㌫も減少したうえ、原油価格の上昇ペースに製品価格がついて行けず、精製部門、化学部門共に大幅な減益となった。市場アナリストは、「この決算は予想を大幅に下まわるものであり、同社経営陣は何らかの対策を迫られている」と述べている。

 あのGMが倒産を噂されるようなことになろうとは…と驚いたのも束の間、空前の利益を上げながら「大幅に下まわった」とのたまうエクソンの貪欲さにさらにビックリ。弱肉強食の資本主義社会ここに極まれりと言ったところか。当然、この衝撃波は日本にも影響を及ぼす。自動車業界の不振と、石油業界の利益追求という両極の狭間にあって、ガソリンスタンド経営はなお一層難しい舵取りが求められる。

 ある名古屋市内のガソリンスタンドの大口顧客だった法人は、社用車の大半をハイブリッド車「プリウス」にしてしまった。しかも全部リース車。その結果、ガソリンの売上が半分以下に激減したうえ、それまで稼がせてもらっていた油外収益が水洗い洗車による僅かな利益だけとなってしまい大打撃を被ってしまった。別のスタンドでは、やはり上得意だった法人が、営業車を廃止、従業員の自家用車を徴用して、めいめいが安いスタンドで現金給油してくるように指示した結果、ほとんど来なくなってしまったそうだ。

 実際、これだけガソリン価格が高騰しているというのに、営業車や作業車の燃料費について何の対策もとらない経営者は、よほど儲かっていて税金の心配をしている人か、ただの馬鹿のどちらかだと言ってよい。各家庭においても、軽自動車に買い換えたり、自転車で通勤するなどして、ガソリン代の節約に取り組んでいる。決して地球環境のためではない。ローンや生活費を確保するためにやむなくそうしているのである。

 代替燃料を、ということになるが、例えばバイオ燃料については、四輪駆動車の大型SUV車にエタノールを1回満タンにするだけでも、一人の人間を1年間養える量の穀物が消費されるという。もしエクソンがバイオ燃料に本格的に参入したら、発展途上国でどれほどの子どもたちが餓死するのかと思うとゾッとする。ホッキョクグマが絶滅した方がまだマシだと言わざるを得ない。

 電気自動車はどうかといえば、米国や日本の流通・交通を維持するだけの電力を温室効果ガスを抑制しながら賄うには、いまのところ原子力発電所をどんどん建設するしかない。原発では原子炉を冷却するためにとてつもない量の水が必要とされる。例えば、世界有数の原発先進国フランスでは、毎年190億立方㍍もの水が必要なのだそうだ。東京ドーム1万5千個分以上である。電気自動車がハイウェイを走り回る時代になる頃には、石油や穀物に代わって水の価格に一喜一憂する時代となっているかもしれない。そのころには、ガソリンスタンドの存続を心配する前に、自分の生命維持の心配をしているだろう。猛暑が続く日には、こんな“寒気”をもよおす未来図を思い描くのがよろしいかと…。

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