セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.220『石商の存在意義』

GS業界・セルフシステム

2008-08-11

 1ヶ月前の事、燃料高騰で苦しむ全国の漁業者が一斉休業に突入した。約20万隻に及ぶ漁船による“漁民一揆”は、改めて原油価格の高騰が我々の食生活に及ぼす影響の大きさを思い知らせるものとなったが、私が感銘を受けたのは、あれほどの大規模ストを敢行させた全漁連という組織の統率力である。仮に、全石商が同様の趣旨で全国4万5千ヶ所のガソリンスタンドに一斉休業を呼びかけたとしたら、どれほどのスタンドがこたえ応じるだろうか。恐らく一斉休業の日に、抜け駆け営業する(中には集客キャンペーンを開催したりする)業者が続出するんじゃないだろうか。

 かつては「右向け右」とばかりに、地域のスタンドを統率し、従わない店は系列元売に直談判して指導させるほどの力があった石商組合だが、いまでは休眠状態となっている地域も少なからずある。例えば、今月1日にレギュラーガソリンの価格が185円に値上がりしたのも束の間、わずか5日ほどで170円となるまでに市況が崩壊した我が日進市には、石商は事実上存在していないといってよい。

 ただし、これが困った事かといえば、一概にそうとは言えない。かつて、価格看板を出そうものなら、自宅にまで電話で看板降ろしの督促をしてきた組合に、一度ならず手を焼いたスタンド経営者は少なくない。あるスタンド経営者は、組合の追跡を逃れるため1ヶ月間雲隠れしたそうな。いまになった考えれば、一体組合に何の権限があってそんな事ができるのかとも思うのだが、そんなことをゴチャゴチャ言っているより、さっさと組合を脱退した方が早い─というわけで、最近では組合員の減少に歯止めが掛からず、運営ができなくなっている組合が増えていると聞く。

 そのため、従来の市況対策一辺倒の姿勢を改め、組合員の経営強化を推進しようという組合もあるのだが、大抵は国の補助制度を利用して講習会を開き、経営コンサルタントや文化人、宗教家などにギャラを払って講演会を開くといった程度のもので、その内容も、おおむね「客の気持ちになって考えろ」だの、「従業員のヤル気を引き出せ」だの、十年一日のごとき論議がなされているようだ。

 若い組合員の力を借りようということで、「青年部」なる下部組織を設ける組合も多い。しかし“青年”部会長となった二世、三世経営者も、その年齢は40代半ば。世間一般ではもはや立派なオジンである。そうした人たちの就任の抱負はといえば、「活発な議論の場を作りたい」とか、「風通しを良くしたい」とか、一体何がやりたいのか皆目わからない。と言うか、何もヤル気がないのではないかとさえ思える。

 じゃあ、どんな事をすればいいんだと言うことになるのだが、冒頭の全漁連のように、世間を騒がせるようなことをするのも感心しない。エスカレートすれば、米国のトラック運転組合やライフル協会のような存在になってしまう恐れもある。自由行動を規制する業界ナショナリズムはその業界の発展に寄与するとは思えない。

 あえて言うなら、セルフスタンドだけが加盟する全国セルフスタンド商業組合、略して“セル商”を結成したらどうだろうか。いまや、古いビジネスモデルを維持することに汲々としている人たちは除外して、セルフスタンド経営者だけで集まるのだ。えっ、集まって何をやるんだって? 例えば、研究会を開いて経営強化を図ったり、情報交換を行なって風通しを良くしたりして…あれあれ、何か変だぞ。所詮、本来商売がたきであるはずの同業者が集まるっていうこと自体に無理があるんだよね。まして、まだまだ淘汰が進むこの業界では。というわけで、やっぱり石商なんかいらないよ、というのが今回の結論。みなさん、これからも自らが信じる道を自己責任で歩んで行こうじゃありませんか。

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